カレッジマネジメント232号
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62リクルート カレッジマネジメント232 │ Apr. - Jun. 2022な点である。「本学は高校までの学習歴が多様な学生が多いのが実情です。工業高校出身者と普通高校出身者ではベースが異なるため、授業への満足度も当然変化する。こうした個別の事情に合わせたカリキュラムの設計が次の課題です」。現状の28クラス以上に細かいメッシュで分けることも検討しているという。リカレント教育強化、学習の個別化対応のほかに、今後の方策はどんなものがあるのか。まず、2022年度に創設されるMDASH応用基礎レベル申請に向けた準備である。既に実施しているリテラシーレベルの選択科目のほか、新たに2022年度からDS系3科目を必修に置く。応用基礎レベルで求められるのは「文理を問わず、自らの専門分野へ数理・DS・AIの知識を応用・活用できること」であり、人材育成スキームとしては一歩応用に進むことになる。そして、さらなる連携、特に他大連携を強化したいと意気込む。小誌231号でご紹介した「金沢市近郊 私立大学等の特色化推進プラットフォーム」の動きがその先陣だ。幹事校であるKITで事務局を務める西川紀子氏は、「各大学の強みを持ち寄り、得手不得手を補完し合って全体が発展できるようにしたい」と話す。「KITはDS教育を提供する代わりに、文系大学が得意な英語教育を提供いただくような、シェアの関係になると良いと思います」。また、「こうした教育価値を向上させる連携は、高校生が大学を選ぶ際の新たな基準になるのではないか」と谷氏も言う。社会ニーズを企業とのディスカッションから丁寧に見出し、スピーディーかつフラットに教育のチューニングに当たる。KITの姿勢から学ぶべきものは多い。(文/鹿島 梓)図2 テーマに沿って学ぶ3つの履修コースLEVEL実装LEVEL応用LEVEL入門KIT情報技術教育 入門から応用、そして実装までをサポートする教育体系コースAlとビッグテータコースIoTとロボティクスコースICTと情報セキュリティ❶ネットワークセキュリティの知識と技術❷ネットワークへの攻撃手法と対策技術❸基礎的な暗号理論と実装ネットワークセキュリティ❶TCP/IPの基礎❷ネットワークの各階層の役割とプロトコル❸ネットワーク状況の把握手法情報ネットワーク基礎❶金沢工業大学の学生対象❷基本的なコンピュータの操作方法❸基本的なプログラミング手法ICT基礎❶IoT実現のハードウエアとセンサーを使った基礎システム構築法❷Raspberry Piによるセンサーネットワークとクラウド❸データに基づくモータやディスプレイへの出力IoT応用❶IoTエッジデバイスの知識と技術❷MATLAB/Simulinkを用いた制御系設計❸プリント基板設計とエッチング❹Linuxドライバプログラミングエンベデッドシステム❶IoTシステム構築のためのC言語❷変数・関数・条件文・繰り返し文❸マイコンの入出力プログラミングIoTプログラミング入門❶基本的なロボットの制御手法❷リアルタイムOSのプログラミング❸PID制御などの制御理論ロボティクス基礎❶IoTの概要と基本的な仕組み❷IoTの活用例とセキュリティの基礎 コンピューティング技術・通信方式❸IoTのコンピューティング技術・データ活用IoT基礎選択❶深層学習、特に画像などの識別手法❷CNNの仕組みと、その使用方法❸具体的なデータを用いた実践的な演習AI応用Ⅰ❶自然言語処理の概要❷形態素解析・構文解析などのテキスト処理❸Word2vecを用いた言語処理AI応用Ⅱ❶プログラミング言語Pythonの基礎❷変数・関数・制御文・繰り返し文など❸リスト・コンテナ処理・イテレータなどAIプログラミング入門❶ビッグデータ処理の基礎❷統計的な検定手法・回帰分析などの多変量解析❸クラスター分析・データマイニングデータサイエンス基礎❶AIの概念と基本的な仕組み❷画像認識・自然言語処理・音声認識などの活用例❸機械学習に必要な基礎的なデータ処理法AI基礎❶scikit-learnを用いたビッグデータの解析❷データの前処理・学習モデル選定・評価手法❸機械学習プロジェクトの実施方法データサイエンス応用実際のデータ・案件・状況をテーマとした「共同開発・研究」学外連携の強化で競争優位性を確保

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