カレッジマネジメント232号
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事例report_04 東北大学データサイエンス(DS)教育の最前線による新たな価値創出AIMDの基礎/挑創カレッジコンピュテーショナル・データサイエンスプログラム(CDS) 63リクルート カレッジマネジメント232 │ Apr. - Jun. 2022る。ポストコロナ産業ニーズを先取るため、60ペタバイト級の高速解析サーバや解析ソフトウエアの開発によるデータ解析を産業応用し、高付加価値創出を担う産官学連携型の研究開発拠点を「サイエンスパーク」として整備する計画である。こうした社会連携は、東北大の建学の理念である「研究第一」「門戸開放」「実学尊重」には欠かせない観点だ。青木氏はこう話す。「研究大学だからこそのアプローチ、科学技術をさらにアドバンスさせるためのプラットフォームを大学が作り、社会のパートナーと協働を深めることで新たな価値を創出していく。大学はそうした流れのプロバイダーになり得るのです」。研究大学におけるAIMD教育とは、まさにこうした場を作って動かせる人材の育成にほかならない。では、その採択内容を見ていこう。東北大学(以下、東北大)がMDASHの申請に至った背景にあるのは、2018年に大野英男総長が公表した東北大学Vision2030(以下、Vision2030)である。次代の学生を育てその挑戦を支えるべく、全体で4つのビジョン、19の重点戦略、66の主要施策を描く壮大な計画だ。その重点戦略の1に掲げる「教育」では、「グローバルリーダー教育」「AI・数理・データリテラシー教育」「アントレプレナーシップ教育」が三本柱と定められている。こうした次代のスキルセットを育成するために教育を柔軟に見直し、AI・DS領域では翌2019年にデータ駆動科学・AI・教育研究センターが発足し、早川美徳教授がセンター長に着任した。さらに、2020年に大学全体のDX戦略を策定した。「コネクテッドユニバーシティ戦略」と称し、教育・研究・社会共創・大学経営の全方位でDXを加速的に推進する内容である(図1)。そこで新たに設置された全学DXの責任者CDOに着任したのが青木孝文理事・副学長だ。また、AI人材担当副理事を設置し、中尾光之教授が着任した。こうした中長期的な大学変革の一つに位置付けられているのが、AIMD(Ai, Math & Data science)教育の展開であり、それこそがMDASHで採択された内容でもある。なお、DX戦略に基づき、東北大が得意とする材料科学分野を中心に、社会価値共創の場としてのキャンパス整備も進んでい東北大学Vision2030に基づく大学改革副理事(AI人材担当)中尾光之 氏データ駆動科学・AI・教育研究センター長早川美徳 氏理事・副学長青木孝文 氏図1 東北大学DX戦略:コネクテッドユニバーシティ戦略サイバー×リアル融合DXの加速的推進ステークホルダーエンゲージメント(共創)の重視先の読めない大変革時代を先導し、社会価値を創造スピーディーでアジャイルな戦略的経営への転換3つの基本方針

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