カレッジマネジメント232号
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66リクルート カレッジマネジメント232 │ Apr. - Jun. 2022イノベーション人材をどう育成・選抜するか入試は社会へのメッセージ#3前野隆司氏慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント(SDM)研究科 教授視点提供インタビュー1984年東京工業大学卒業、1986年同大学修士課程修了。キヤノン株式会社、カリフォルニア大学バークレー校訪問研究員、ハーバード大学訪問教授等を経て現在慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授。慶應義塾大学ウェルビーイングリサーチセンター長兼務。博士(工学)。著書に、『幸せな職場の経営学』(2019年)、『幸福学×経営学』(2018年)、『幸せのメカニズム』(2013年)、『脳はなぜ「心」を作ったのか』(2004年)など多数。日本機械学会賞(論文)(1999年)、日本ロボット学会論文賞(2003年)、日本バーチャルリアリティー学会論文賞(2007年)などを受賞。専門は、システムデザイン・マネジメント学、幸福学、イノベーション教育など。イノベーションの必要性がうたわれて久しい。現在、イノベーション人材育成反対という大学経営者はいないだろう。しかし、そもそもイノベーションとは何か。何故イノベーションが社会に必要か。そのために大学は何ができるか。イノベーション人材はどのように育成できるのか。慶應義塾大学SDM研究科の前野隆司教授にお話を伺った。――まず、イノベーションとは何なのか教えてください。イノベーションの語源は、ラテン語のnovus=newに由来します。大きくは「持続的イノベーション」と「革新的・破壊的イノベーション」に分かれ、前者は継続的な改良を重ねていくこと、後者は0から1を創り出すプロセスです。日本は、前者は得意ですが後者が不得意です。しかし、答えのない先の読めないVUCAの時代、求められるのは後者です。また、日本ではイノベーションを「技術革新」と訳す場合もありますが、本来は技術に限らず、社会を革新するものであればイノベーションと呼びます。――革新的イノベーションの条件やヒントはありますか。ビジネスデザイナーの濱口秀司氏によると、イノベーションの条件は3つあります。まず、「見たことも聞いたこともないこと」。それでいて、実現してみると実は消費者が欲しかったもの。次に、絵空事ではなく、今ある技術や今後開発予定の技術で「実現が可能なこと」。最後に、「物議を醸すこと」です。賛否両論なアイデアを捨てずにイノベーションのタネだと気づくことが重要で、これは素人のように考えるということです。往々にして専門性が高くなると、深く狭く追究するマインドがセットされてしまいがちですが、玄人的専門性を獲得しつつも、いつまでも素人のようにフラットでピュアな視点を持ち続けることが大事なのです。――素人のように発想して玄人として行動する。イノベーションのヒント

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