67リクルート カレッジマネジメント232 │ Apr. - Jun. 2022全ての学問は進んでいくと細分化していくものです。俯瞰する視点が見えづらくなっていく。でもそれでは、実際に社会で必要なテーマに応じて再編成することが困難になってしまう。特に日本の研究者は研究室に閉じこもりがちで、オープンに開きフラットにメタ認知することが苦手な場合が多い。それは元をたどれば、そうしたメンタリティを教育によって獲得できていないことが原因だったりします。日本企業はオープン・イノベーションが苦手だと言われますが、教育によって、内向き志向や狭く深く突き詰める志向が悪い意味で表面化してしまっているのが現在と言えるかもしれません。安定した時代では縦割りの役割分担は効率的ですが、VUCAの時代ではそれを横に広く拡げ、関連づけて横断的に捉える思考が求められます。不安定な社会の課題に対峙するには、既存の学問のあり方に囚われず、課題や問いを軸に関連する学問を融合的に捉え、統合する必要があります。――初等中等教育の分野では、新学習指導要領によって「探究」が始まっています。こうした動きが横断的メンタリティを鍛えるものならば、大学はそれをどう受け止めるべきでしょうか。まさに、探究とは物事の捉え方を教科横断的に捉えるのに適した動きです。日本もようやくこうした教育に舵を切ったのは喜ばしいことです。大学はこうした探究を、社会課題を解決する研究にきちんとつなげる必要があります。――具体的にはどういうことでしょうか。教養科目と専門科目がきちんとつながっている教育をすることです。探究を頑張ってきて、大学でもそれを深めようと思っていても、入学後まずやるのは教養教育。せっかくやってきた探究の流れがそこで阻まれてしまう。さらに、脈絡のない教養は広く浅すぎて興味が持てず、年次が上がってからの研究は狭く深すぎるというのでは困る。探究に関連した教養で問いに幅を持たせ、リサーチクエスチョンとして研究し、学術的専門性を高めることで厚みが出る。探究を研究シーズとして丁寧に育てることが大事です。大学とは本来、教養と専門があって、教養で自分の「やりたいこと」を発見して専門を選ぶ、という躯体のはずですが、制度上そこが分断されてしまったのが大きな問題です。探究と教養と研究をシームレスに接続できているのかを各大学が見直す必要があるでしょう。――イノベーション人材はどういう環境で育まれるのでしょうか。図1 幸せ・創造性・多様性の関係探究が育む横断的思考を大学教育でシームレスに研究につなげる創造性に寄与するのは多様性幸せ創造性多様性友人の多様性は友人の数以上に幸せに寄与多様性の高いチームはイノベーティブ幸せな人は不幸せな人よりも創造性が3倍高い
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