リクルート カレッジマネジメント232 │ Apr. - Jun. 202268イノベーション、つまり創造性は、多様性の高い環境で高まり、同時に幸福度が高まるという関係があります。また、多様なチームと均一なチームでブレストをすると、前者の方が高い成果が出る。あるいは、友達の数よりも多様さが人の幸福度に影響する。幸せな人は不幸せな人に比べて創造性が3倍高いという研究結果もあります。SDGsやダイバーシティはお題目的に捉えてしまう人も多いですが、ダイバーシティを推進することで売上が3倍になる、と聞けばどうでしょう。効果に向き合えば、その推進が寄与するものの大きさに気づくでしょう(図1)。革新的イノベーションは、他と違うことをやらなければいけません。だからこそ、自分にない視点を持つ他者の存在が尊重される。マイノリティーは希少性と同義です。違いを認めて尊重し合うことが大事なのです。日本は高度経済成長期の教育システムが老朽化しているにも拘わらず、均一主義から脱却できておらず、他者を個として尊重する文化リテラシーが低い。だから、改善サイクルによる持続的イノベーションは得意でも、違いありきの革新的イノベーションが苦手。このあたりに閉塞感の根源があるように思います。しかしこのままでは、正解も妥当性もないVUCAの時代は生き抜けないでしょう。多様な人が尊重しあう文化風土を持った社会によってこそイノベーションは成り立つ。正解のある問題を解いて満足する人ではなく、自分とは違う他者と対話しながら自由に発想し、自分を信じて挑戦できる人が求められているのです。初等中等教育の現場で行われている「主体的・対話的で深い学び」はそちらへ向かう胎動のひとつでしょう。――イノベーション人材育成を打ち出す大学の大半の方法論はグループワークとPBLです。間違ってはいないように思いますが、本当にそのやり方でイノベーションは生まれるのでしょうか。必要な視点を教えてください。私が所属する慶應SDMが整備したのは、イノベーションを創るための学問です。その根幹にあるのはシステム思考(図2)×デザイン思考(図3)という組み合わせで、バラバラに存在する様々な学問を俯瞰して横串でつなぐ営みとも言えるもの。全体を俯瞰したうえで、システムとして要素間の関係性を考え、ゼロイチで新たな価値を作っていく協創プロセスです。既存の学問は仮説を立ててそれを検証するというサイクルが基本です。それを否定するのではありませんが、今まで誰も発想しなかったことを志向する革新的イノベーションにおいて、過去や実績に基づく仮説に拘りすぎることはむしろ阻害要因になる。そのため、まずは仮説を持ちすぎず、素人の目で事象を見ることが大事です。結果として出てくる定量データに囚われず、イノベーションを創造したい領域やコミュニティに自らを置き、主観的に捉えること。戻ってきたら専門家の深い視点で事象を分析すること。この往復をトレーニングすることが大事です。現状の改善を積み重ねる持続的イノベーションに慣れていると、この入り方を間違えてしまうことも多いです。また、アイディエーションの段階において、ブレインス入試は社会へのメッセージ図2 システム思考とはイノベーション人材育成に必要なのは正しく設計された協創プロセス全体俯瞰システミック構成要素のつながりシステマティック木を見て森も見る全体像としての構造理解構造の緻密な詳細の理解多視点からの可視化
元のページ ../index.html#68