カレッジマネジメント232号
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69リクルート カレッジマネジメント232 │ Apr. - Jun. 202269リクルート カレッジマネジメント232 │ Apr. - Jun. 2022きない。自分達ができることありきで考えてしまい、ニーズとの整合を後回しにしてしまう。大学も同様です。教育や研究の成果を社会への新しい価値創造に還元できるか。いかにニーズ起点で発想できるか。そのあたりがうまい大学とそうでない大学で勝負が分かれ始めているように感じます。既成概念を乗り越え、縦割りの弊害を打ち破り、様々なステークホルダーがオープンに協力して斬新なコンセプトを生み出し、ビジネスモデルまで吟味していくことを、強力なリーダーシップのもとで実現する、現代的協創が不足しているのです。学生に挑戦を促す以上、大学自身がこうした挑戦を恐れないことです。例えば、慶應は三田を中心にした学問体系とは全く別の場としてSFCやSDMを展開しています。時流を読んだ多様な展開をしていくことが経営の幅を拡げ、社会への提供価値を豊かにする。大学は既存学問だけを守っていればいい存在ではない。あらゆる社会変化に備え、挑戦を怠らないことが人材育成の場として重要です。意識的にチャレンジフィールドを設けることがその助けになるでしょう。また、ゼロイチで発想することも大事です。そのためには、大学を率いる学長がイノベーターでないといけません。学長自身が革新的イノベーションを起こすメンタリティを持っているのかが問われているとも言えるでしょう。学長は個性をもっと持つべき。多様性の時代に、大学が多様で学長が個性的でないとうまくいかないのではないでしょうか。建学の精神に根差した大学の在り方をどう体現するのか、社会で求められているニーズとどうアジャストしていくのか、経営問題として本気で考える大学がもっと増えてほしいですね。(インタビュー・文/鹿島 梓)トーミングとディスカッションの違いが明確に意識されていないことも問題です。これは本来正反対の営みです。特に「質より量」「批判厳禁」「エンカレッジ」といったブレストのルールを踏まえずそれっぽいことをして、芯を食っていないPBLや探究になっていないかが心配です。また、役割分担型社会においては、考える人と手を動かす人は分離しています。しかしゼロイチを可能にするイノベーション人材は、その感覚を持つためにも、考える→アイデアを出す→作る→振り返るというプロセスを全部できないといけません。デジタル技術が発展し、素人でも精度の高いものを作ることができる時代に、どうすれば価値を創出できるのか。プロトタイピングでそうした感覚をしっかり培う必要があります。イノベーションとは、やるべきことに対して、やるべき方法で取り組んでいかなければ生まれません。システム思考で全体から細部をシステマティックに分析する一方で、デザイン思考で主観を重視した視点で物事を捉えることを繰り返す。そのスキルは訓練によって向上し、誰でも自由にアイデアを生み出せるようになる。ただし、イノベーションレベルに達するには時間はかかります。大学はこのことを正しく理解して教育を展開していただきたいです。――教育展開のほかに、イノベーション人材を育成するために大学が担うべき役割とは何でしょうか。自社内の技術力が競争力の源泉だった日本企業の多くは、そこに固執してしまって社会のニーズにアジャストで図3 デザイン思考とは学長よ、イノベーターたれオブザベーションアイディエーションプロトタイピング強い仮説に囚われず「無意識の声」を聞く主観的に感じてインサイト(気づき)を得る質的な活動を重視ブレインストーミングなどを活用しチームが協働することによって生み出される「集合知」を重視短時間に多くのアイデアを試し改良する活動頭だけではなく手で考える体で考える

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