カレッジマネジメント232号
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リクルート カレッジマネジメント232 │ Apr. - Jun. 202270事例report 慶應義塾大学 SFC AO入試総合政策学部 学部長 加茂具樹 氏環境情報学部 学部長一ノ瀬友博 氏入試は社会へのメッセージ慶應義塾大学に湘南藤沢キャンパス(SFC)が生まれたのは1990年。それまでの学問の伝統によらず、地球規模の課題を発見し解決できるイノベーター育成教育を掲げて総合政策学部と環境情報学部が開設されると同時に、開始されたのがAO入試である。教育のコンセプトに共鳴し、高い学習動機を持つ学生を選抜するため、従来の学力選抜とは別軸の入試として開発され、日本におけるAO入試の先駆けとして大きな注目を集めた。今、SFCのAO入試はどうなっているのか。総合政策学部長の加茂具樹氏、環境情報学部長の一ノ瀬友博氏に伺った。まず、「AO入試はSFCへの入学意欲の高い学生をピンポイントで選抜するために実施しています」と加茂氏は言う。起点にあるSFCの教育とは、図に示すように、自分のテーマや目的に適した形で、履修内容を完全に自由にカスタマイズできるカリキュラムが最大の特徴である。多様性ある学生一人ひとりの個性を尊重し、多くの学生が教員や仲間と共に研究や活動を行うことで、自分のありたい姿を実現する。学年に応じて基礎から専門へという流れすら、そこにはない。フラットに配置された科目群を自分の軸に合わせて履修しながら、活動の中軸となる研究会に向かう。研究会は「研究を教員と学生が共に行う」が原則のSFCにおけるコアであり、教員と学生が共に切磋琢磨しながら多様な課題に取り組む場だ。能力次第では1年次から研究会の履修が認められる。両学部の授業や研究会は自由に行き来することができ、全体を俯瞰すると、多くの学生は2つ程度の研究会を掛け持ちしながら、自分の研究テーマを据えて学んでいる。その組み合せにオリジナリティーが表れ、他人がやっていないことをやるのがSFCの文化だ。入学時期は4月と9月の2回、同時に卒業時期も3月と9月の2回ある。セメスター制によって、学内での旺盛な知的活動に加え、留学、フィールドワーク、インターンシップ等の学外活動を組み合わせ、自由で柔軟な学びと多様な進路の設計が可能である。一ノ瀬氏はこれを、「出る杭をどんどん伸ばす教育」と称する。こうした教育を展開するに当たって入学者に求めるのは、大きく分けると「地頭の良さ」と「目的意識」の2つであると言えそうだ。主に一般選抜は前者を、AO入試は後者を見極めるゲートウェイの役割を果たしている。一般選抜で問う「地頭の良さ」と言っても、いわゆる暗記問題や情報処理速度を問うような問題ではなく、思考力を問う長文#3イノベーション人材をどう選抜・育成するのか30周年を迎えたSFC「出る杭をどんどん伸ばす」フルフラットなカリキュラムSFCカリキュラムをフル活用するための目的意識を問うAO入試

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