カレッジマネジメント232号
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73リクルート カレッジマネジメント232 │ Apr. - Jun. 2022カッションしています」と一ノ瀬氏は言う。このプロセスが教員のFDを兼ねるほど重要だという。それだけ、入学時点のセレクションが教育の質に影響する実感値があるということだろう。こうした動きの背景には、教員側に、独自性の高い価値ある教育を展開しているという自負とともに、SFCスピリットが共通認識として通底していることが大きそうだ。SFCでは教員採用の際に、「異分野の研究者とコミュニケーションし、新しい価値を創出することができるか」が問われるという。「そうしたマインドがないとこのキャンパスではサバイブできない」と一ノ瀬氏は笑う。「教員も受験生と同じく、自分の問いを持って横断融合しながら研究することを求められており、試されているのがSFCなのです」と加茂氏も言う。そこにジョインする最適なメンバーを募るのが入試制度。SFCにとって入試とは、企業における採用に近い意味合いなのである。AO入試通過者に見られる特徴はあるのだろうか。加茂氏は、「AO入学生のパフォーマンスは概ね入学後も高く、多様性も幅広い傾向がある」と話す。学年のなかでももともと目的意識を持つが故に、スタートダッシュが速く、早い段階で研究会の扉を叩く等、行動力や牽引力に優れており、周囲への影響力も大きい。そのため、自由度の高いSFCの教育にはフィットしやすく、新たな挑戦を次々に生み出すブースターのような役割を果たすのだ。とはいえAO入試だけでなく、様々な入試通過者が集うからこそ、互いにない視点を持ち寄り、研究を発展させることができる。スタートダッシュが速い人も、大器晩成型の人も、等しく成長できることが大事であり、個人によってスピードやタイミングが違うことを許容するキャンパス作りが肝要だという。近年SFCでは入学時期を4月と9月で選択でき、3月に高校を卒業してから半年ギャップイヤーを経て9月に入学することもできる。また、AO入試は英語でも日本語でも受けることができ、まさに受け方も時期も多種多様、優秀な学生がいつでも来られるように門戸を開放している。最後に、イノベーター育成拠点としてのSFCは、いかに社会のニーズを教育研究に反映しているのかを聞いた。加茂氏は、何か仕組みや場があるというより、現状維持を良しとせず、常に改善・改革を志向する教員の存在と、教員同士の会話量を挙げた。「異分野間の知見を借り合い、新たな価値を生み出そうとする気質がある人しかいないので、常に分野横断で刺激し合っています。だから、キャンパス構成員の多様性と風通しの良さがイノベーションの源泉と言えると思います」。一様性の中でイノベーションは生まれづらい。多様な人材や考え方をいかに混ぜるかが創造性のキーである。「SFCのコアである研究会は、オーセンティックな大学の研究室とは違い、専門性に囲い込まれることがない。学生も教員もそれぞれが横断的につながり、互いに自分にない視点を補い合い、不確実な社会の中で新しい価値を生むのに必要なメンタリティを育んでいます。教授が一番偉いのではない。学生ならではの視点から生み出されるものも多くあります。そうした意味で我々はフラットです」と加茂氏は続ける。「単独の教員や教育の所属ではなく、チームで学生を教えるのが教員間のコンセンサスであり、自分のゼミ生が他のゼミで知見を得たり、共同研究したりすることを推奨する気質がある。それが常に社会に開けている環境を作っていると思います」と一ノ瀬氏も言う。社会との接続を改めて考えるまでもなく、研究会を中核とした教育により自然と社会実装や社会課題抽出が行われ、解決に向けた創造的な方策を多様性の横断により創出するのである。多様性を尊重し、個が自由自在に動いて新しい化学反応を起こすことを推奨するのがSFC。AO入試で問われるポテンシャルとは、SFCで何をしたいと本気で考えているかという目的意識にほかならない。(文/鹿島 梓)大学生活のスタートダッシュと多様性を担保する仕掛け多様性を尊重し常に分野横断・連携を志向するキャンパス

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