カレッジマネジメント232号
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79リクルート カレッジマネジメント232 │ Apr. - Jun. 2022審議会に通す必要のある取り組みとなる。連携開設科目の活用は必須にならない。選定件数は5件で年2億円を補助(逓減あり)、6年で上限10億円となる。「タイプ①は例えば私立大学が学部を1つなくしてSTEAM人材育成のための学部を新設するというパターンもあるでしょう。そのなかで連携開設科目が30単位あってもいいですし、または6年間の事業期間がありますので、教員組織も変えたうえで連携開設科目に頼りきることなく、自校で将来的には124単位のほとんどを再編することもあるかと思います」(早川氏)。このようにSPARCの要件をみていくと、「かなりハードルが高い」という印象を受けるのではないだろうか。また、学部・学科再編を伴うタイプ①がタイプ②よりも選定件数が多い。ここから、地域連携の裾野を増やすというよりもこれからの地域活性化人材育成をリードしていく先進的な事例を作っていこうという意思があることが分かる。地域としっかりコミュニケーションをとりながら124単位全体を作り上げていく。これがSPARCの目指すところだ。「過去の事業では『○○人材』の育成といったように専門に特化した人材育成プランが正科目外にたくさん組まれていたと思います。今回は124単位全部を見直してほしい。専門以外の『英語力』『問題解決力』『コミュニケーションスキル』に至るまで、地域が求める人材像に沿った形で124単位を構成してほしい。COC事業の延長だと考えている方もいますが、そうではありません。SPARCは大学教育改革そのものだと考えています」(早川氏)。SPARCは地域に根差した学位プログラム実現を目指す。そのために最も重要なことは、大学側が視点を大学・学部から、大学をとりまく社会に移し、学修者本位の学位プログラムを設計することではないだろうか。「学問の深堀りは大学にしかできない機能です。しかし学修者目線に立ち、キャリアパスや社会での活躍を目的にしたとき、大学が提供できることはもっとあるはずです。大学での学びを社会で実践してみる、社会で実践してみた課題を大学で学んだ知識で解決する、という好循環で、学びは深くなる。こうした学修者と社会との深い関わりが、『大学って何をやっているか分からないよね』といった印象を払拭し大学の信頼を高め、ブランドを高めることにつながる。そういった意味でも着眼点を大学の外に置いているのがSPARCです。今の多くの大学にはない発想かもしれません。ですが、視点を社会・学修者にしっかりと定め、一緒に歩める地域・大学とパートナーシップを築いて手を挙げてもらいたいと考えています」(西氏)。最後に、地域連携プラットフォームが提唱され、これまでに行政との連携を試みた大学のなかにはその難しさを感じているところも多いかもしれない。難しさの理由には様々なことが考えられるが、自治体のなかに大学と連携する担当部署がない、という場合が少なくない。さらに地域よりも国に視線を向けて運営している自治体もまだまだ多いようだ。行政が地域と地域にある大学にどのようにコミットできるかはSPARCを推進するうえで大きなポイントになるだろう。これに対し西氏は、次のように話す。「自治体の担当部署は、教育部局というよりも、地域の5年後、10年後の行政計画を考えるプランニング部署や知事直轄の企画部署などを想定しています。教育だけの話ではなく、『地域がどう生き残るか』という視点が必要です。これから更に人口が減少する国内で”東京に行くな” ”東京に負けるな”という話をしても仕方がない。『世界をフィールドにして地域がどう成長できるか』という視点で大学と自治体が運命共同体として考えていかなければいけないし、そういった視点を大学からも地域に提供していくことも必要だと考えています」。また、この事業では、地方自治体と雇用創出・若者定着等に関する協定を締結し、総務省の要綱に定める内容に合致した場合、連携先の地方公共団体の産業振興や就職時対策、入学時対策に資する取組に対して、特別交付税が講じられる予定となっている。大学だけでなく自治体への支援により、地域連携がさらに現実的に稼働することが期待できそうだ。(文/木原昌子)SPARCは大学教育改革そのものSPARCに関連して自治体にも特別交付税

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