カレッジマネジメント232号
80/108

80リクルート カレッジマネジメント232 │ Apr. - Jun. 2022高知大学は第3期中期目標に「地域協働による教育」を掲げ、「スーパー・リージョナル・ユニバーシティを目指します!」と宣言。2016年度大学教育再生加速プログラム(AP)テーマV「卒業時における質保証の取組の強化」もこの「地域協働型教育」を加速させるものと位置づけている。櫻井克年学長は、「地域にどっぷり入って地域の人と一緒に考えて、のたうち回って答えを出す。そういう人材の育成こそ、高知大学にしかできない『売り』になるという思いがありました」と語る。高知大学は以前から、地域と向き合う様々な取組を行ってきた。2008年度のスタートから数百人の社会人修了生を輩出している土佐フードビジネスクリエイター(FBC)人材創出事業。2013年度からのCOC事業の一環として始まった、インサイド・コミュニティ・システム化事業(KICS)では、ユニバーシティブロックコーディネーター(UBC)という4人の教員を、県内各地域に常駐させた。そして2015年度には新たに地域協働学部を設置した。そうした中で生じた問題意識の1つが「地域に貢献できる人材に関する評価指標が明確でない」ことだった。そこでAP事業では、地域協働型教育の多面的評価指標の開発を事業の「3つの柱」の1つとし、「10+1の能力」にまとめた。10の能力を統合し他者に働きかける力「統合・働きかけ」を+1としたのが特徴だ。「能力をバラバラに持っているのは、色々な武器は持っているけれど使い方を知らないようなもの」と櫻井学長は言い、武器の数や種類を増やすのではなく、使い方にあたる「統合・働きかけ」を「メタ・コンピテンシー」としてプラスしたという。この「統合・働きかけ」の評価は、学部学科ごとに定めた授業科目でのパフォーマンス評価としている。学生総合支援センター長の小島郷子教授は、「働きかけとは、自分が学んだことをどうパフォーマンスとして表せるかだと考えました。教員がそれを評価できるのが授業科目」と説明する。多くの学部では卒業研究科目が対象となる。一方10の能力のうち、GPAで評価する2つを除いた8つの能力の評価にはルーブリック(能力測定指標)を取り入れ、2018年度入学生から、学生の自己評価に適用している。ルーブリックの作成は地域企業、高校関係者らが加わった研究会で行い、外部の意見を反映させた。「10+1の能力」の策定に伴い、学部学科ごとの従来のディプロマ・ポリシー(DP)を「10+1の能力」に結び付けて見直し、整理した。これらの評価の結果はe-ポートフォリオに蓄積され、2019年度からは卒業時にディプロマ・サプリメントの発行も可能となっている。e-ポートフォリオの有効活用には、リフレクション(振り返り)が不可欠で、年に1回、学生とアドバイザー教員がe-ポートフォリオを参照しながらの「リフレクション面談」が設定されている。それに加え、卒業の出口が見えてくる3年生の前期を、卒業後を見据え、これまでの大学生活を振り返るための「リフレクション・セメスター」としている。地域協働の観点で、「学生の成長を地域と社会と協働して高知大学地域協働型教育で、スーパー・リージョナル・ユニバーシティを目指す地域協働型教育の評価指標を「10+1の能力」で整理リフレクションによるe-ポートフォリオの有効活用櫻井克年 学長学ぶとをつなぐ働く35

元のページ  ../index.html#80

このブックを見る