カレッジマネジメント232号
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リクルート カレッジマネジメント232 │ Apr. - Jun. 2022る規定を削除して、教員組織の基本となる一般的な在り方を規定し、具体的な教員組織の編制は、各大学が自ら教育・研究の実施上の責任を明らかにしつつ、より自由に設計できるようにすべきである」と述べている。その後、2011年1月答申「グローバル化社会の大学院教育」で「学位プログラムとしての大学院教育の確立」が謳われ、2018年11月答申「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」では、教育研究体制における多様性と柔軟性の確保のための具体的な方策として「学部、研究科等の組織の枠を越えた学位プログラム」を新たな類型として設置可能とするとの提案がなされている。渡邊(2016)は、これらの政策と関連付けながら教教分離の展開を年代別に整理している。それによると、(1)1970年代:「新構想大学」と教教分離、(2)1990年代後半−2000年代前半:大学院重点化と「研究型」の教教分離、(3)2000年代後半:教育研究システムの柔構造化と「教育型」の教教分離、(4)2010年代:人員配置の効率化・適正化と教教分離における「経営」的視点の高まり、という流れになるという。1971年から最近までの答申を簡単に振り返っただけでも、文部科学省が学部・学科制や講座・学科目制が抱える構造的問題の打破から、社会の要請や学問の動向に即した柔軟な教育プログラムの編成に、関心や重点を移してきていることがわかる。ここで教教分離型組織の具体例を見ておきたい。筑波大学を除くと、最も早く全学レベルで教教分離型改組に踏み切ったのは九州大学である。2000年4月、大学院重点化に合わせて、大学院の教育研究組織である研究科を、大学院の教育組織である「学府」と教員の所属する研究組織である「研究院」に分離した。これにより、学府・学部教育への研究院の枠を超えた教員の多様な参加が可能となり、教育・研究双方の組織をそれぞれの必要性から独自に再編することもできるようになった(2021年度九州大学概要より)。本誌192号(2015)の特集でも紹介された金沢大学と高知大学も注目される事例である。金沢大学は2008年に「学域学類制」に移行、2021年度現在、教育組織として学士課程4学域18学類、大学院7研究科、教員が所属する研究組織として4つの「研究域」の下に16の「系」と4センターが置かれる体制となっている。高知大学も2008年に6研究科を文理融合型の「総合人間自然科学研究科」に一元化するとともに、教員を新たに設置した「教育研究部」に所属させる形で教教分離型の体制に移84大学ごとに多様な展開を見せる教教分離型改組大学を強くする「大学経営改革」Innovating University Management教育組織と教員組織(研究組織)の分離の具体例 学系26法学学術院法学学術院法学部大学院法学研究科大学院法務研究科比較法研究所法務教育研究センター研究科修士8•博士16学術院3学術院•6研究群その下に学位プログラム教育研究部4つの学系13の部門研究科総合人間自然科学研究科学群6学群6学部6学部11学府18九州大学筑波大学高知大学早稲田大学(法学学術院の例)(参考:大学院重点化大学)2021年度九州大学概要「学府・研究院制度について」を基に作成1980年当時2022年現在大学院大学院研究院18研究科(教員研究組織)学部系11凡例:   学士課程    大学院    教員組織

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