カレッジマネジメント232号
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85リクルート カレッジマネジメント232 │ Apr. - Jun. 2022一対一の関係を維持するケースが多く見られる。現状からの大きな変化は避けたい、組織分離に伴う運営上の負担増を抑えたいといった現場サイドの意図が読み取れる。既存の体制下でも、教員が学問の動向や社会的要請の変化を敏感に感じとり、教育の内容・方法を不断に見直し改善することができるのであれば、敢えて改組という道を選ぶ必要はないのかもしれない。また、内部質保証が重視される今日において、教育組織と教員組織が一体である方が一貫した責任体制という点で優れている面もあるだろう。その一方で、複数の学部で同じ専門分野の教員を配置したり、同じ学部でありながら学科の壁が高く、一つの学部を構成している実質的意義が乏しかったりという問題を抱える大学が多いことも事実である。これらを打破する方策として、教教分離型の改組が有力な選択肢であることは確かである。実施にあたって重視すべきは、改組自体が自己目的化することのないように、目的を明確にし、改組案の合目的性を十分に検証したうえで、構成員の理解を最大限に得るように説明することである。また、組織を分離することで管理運営に係る負担が増すことは避けられないが、それを最小限に抑えるための意思決定システムや業務プロセスの設計も不可欠である。加えて、形を整えることを重視するあまり、新たな組織・制度を一律的に適用することは慎重でなければならない。現体制の下でも高い意識を持った教員が協働して優れた教育を行っている事例も決して少なくないだろう。一律的な改組によってこれらの活動が損なわれることのないよう留意する必要がある。天野(2013)は、教育研究組織の変革を求める政策的な動きをヨーロッパ・モデルからアメリカ的なモデルへの転換を目指すものとの見方を示したうえで、「学生と社会、とりわけ学生のニーズを満たし、しかも教員の研究の場を保証する、どのような新しい教育研究組織を創造していくのか」と問いかけている。その答えは個々の大学が深い議論を通して見出していくしかない。行している。教育研究部の下には4つの「学系」、その下に13の「部門」が置かれている。4学系の一つである「総合科学系」は学内公募で選ばれた3部門を含む計4部門で編成されているが、そのうちの一つである地域協働教育学部門が素地となって2015年4月に38年ぶりの新学部である「地域協働学部」が設置されたことは注目に値する。私立大学では桜美林大学が2005年から2007年にかけて学群制に移行するとともに、2007年に学系制を導入し、学群・学系制による教教分離を実施している。また、2021年には大学院を国際学術研究科に一元化し、私立大学としては初の学位プログラム制を導入している。早稲田大学が2004年9月に設置した「学術院」も教員組織の一つの形態である。それ以前は独立した機関として位置付けられていた学部・大学院・研究所を、系統ごとに学術院として一体化したことで、管理運営上の諸問題への柔軟な対応が可能になり、系統ごとの主体的な教育・研究活動が促進されたという(同大学ウェブサイトより)。これらの取り組みについて、聞き取りや質問紙による調査を行ったとしても、学長はじめ全学的な立場で推進した役職者による評価と現場の教職員による評価の間にかなりの隔たりがあることは想像に難くない。学問の発展や社会的要請の変化の前に、または学長主導による全学的見地からの運営に対して、既存の学部・学科体制が高く厚い壁を築いて立ちはだかっている。教教分離型の改組はその打破を目指した挑戦である。これに対して、挑戦を受ける側の現場の選択肢は、改革に反対し続けるか、組織・制度の変更を受け入れつつ実質的な変化を最小限にとどめるか、新体制の下で改革を目指すか、のいずれかとなる。仮に改組に漕ぎ着けたとしても、改革を推進する側が一定の妥協を図り、現場の側も変化を最小に食い止めるために様々な策を講じるという形で収まるのが現実の姿ではなかろうか。実際に、教教分離型改組を実施した大学の組織図を確認すると、学科に対応する形で教員組織に部門を置くなどして、【参考文献】渡邊あや,2016「第16章高等教育政策の影響」『大学の組織運営改革と教職員の在り方に関する研究(最終報告)』(研究代表者川島啓二)天野郁夫,2013『大学改革を問い直す』慶應義塾大学出版会避けるべきは組織改革の自己目的化と形を整えるための一律的な改組

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