カレッジマネジメント232号
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92リクルート カレッジマネジメント232 │ Apr. - Jun. 20221章:単独分野のマーケットトレンド本調査では、「リクルート入試実態調査」の集計データを基に、2021年時点で国公私立大学が設置していた5180学科について、学科名称や教育内容に照らし合わせ、リクルート独自の12の大分類・78の小分類(図表1)に分類した。なお、この78分野に当てはまった3485学科を「単独分野」と定義。また、複数分野が融合していて78分野に当てはまらなかった1695学科を「複合分野」と定義している。特集で見てきたように、社会・産業界の変化と人材育成トレンドの変化、初等中等教育の変化と、高等教育の前後では大きな変化が起こっている。高等教育は社会ニーズに応じたシーズを育て、変化対応力の高い人材を育まず単独分野の学科系統から見ていこう。縦軸に志願者数、横軸に募集定員数を置き、図表上の矢印で、ライフサイクルのパターンがどのように変化してきたかを示したのが、学科系統のライフサイクル図である(図表2-2~2-13d)。製品ライフサイクルになぞらえ、Ⅰ成長期、Ⅱ成熟期、Ⅲ衰退期、Ⅳ撤退期、Ⅴ再成長予兆期という、5つの段階があると仮説を立てている。ただし、マーケットの趨勢が必ずしもこの順序になるとは限らず、特に最近は変化が激しく、「成熟前に衰退する」「撤退したまま再成長しない」といったケースも散見される。以下の単独分野グラフは全て「志願者数×募集定員数の推移(1992、1996、2000、2004、2008、2012、2016、2018、2021)」である。ステークホルダーの理解は得られ、志願者数に結果が表れてくるであろう。当然効果的な広報や情報伝達ができているかどうかによっても結果は変わる。志願者が増えるかはそうした複合的な要因によるのであって、特定の学科が必ず伸びるという単純な話ではないことは言うまでもない。また、志願者が継続的に増加するには一定の時間を要するため、社会ニーズが顕在化してから設置までには一定の検討期間があり、かつ、そうしたニーズを反映した学科系統の新規設置が増加してからも、志願者が増加するには一定の期間が生じる。つまり、伸びてくるべき分野がまだそこまで伸びていない。今回の集計ではこうしたギャップが明らかになった。成し、探究軸で学んでくる生徒達の学びを止めず、シームレスな高大接続を継続的に実現する必要がある。ではそうした学びをデザインした場合、ブランド力が高まるのか、志願者数が増えるのか、というのは、短期的な経営テーマとして当然関心の高いところであろう。しかし、今回数値データで見る限りでいうと、志願者数に跳ね返るのはまだこれからという感が否めない。つまり、新しい領域を創ったからといって、必ず集まるというわけではない。そこには立地やポジショニングといった外的要素も影響するほか、大学自身の戦略やドメインに即した独自性、ストーリーが必要になる。そうしたストーリーやビジョンにこれからの可能性を感じれば、受験生やⅡ成熟期Ⅰ成長期Ⅲ衰退期Ⅳ撤退期Ⅴ再成長予兆期募集定員数志願者数図表2-1 学科系統のライフサイクル図

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