カレッジマネジメント234号
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考察10次ページから紹介しているグラフは、2022年の上位10大学について、2008年~2022年にわたる15回の調査の志願度の推移を表したものである。改めて、大学の志願度の推移を見ると、大きく3つのことが影響を与えていることが分かる。1つ目は、「社会環境の変化」、2つ目は「各大学の改革の推進」、そして3つ目が「高校生への広報」、つまり高校生に伝わっているかである。まず、社会環境の変化との関係を考えてみたい。「進学ブランド力調査」を開始した2008年当時は、小泉改革が進む中で景気が上向きの時期だった。関東は高校生が“憧れ校”と呼んでいた早稲田大学がトップ、東海、関西でも私立大学が志願度トップとなった。2008年9月に起こったリーマンショックにより2009年の調査時には景気が一気に冷え込んだ。関東で高校生が頑張れば手が届く“チャレンジ校”と呼んでいた明治大学、東海では学費の安い国立の名古屋大学にトップが入れ替わった。その後、2011年には東日本大震災でさらに景気は冷え込み、関西でも2011年に国立の神戸大学が3位になる等、この傾向が続くこととなる。その後、2012年からスタートしたアベノミクスや、2013年の東京オリンピック開催決定等、景気回復の兆しが見え始め、東海で2014年に私立の名城大学が、関東で2017年には早稲田大学がトップに返り咲いている。2017年以降は2016年にスタートした定員厳格化により、関東・関西の大手総合私立大学が難化したことから、軒並み志願度が低下した。2021年には定員厳格化が一段落したことから、各エリアとも大手総合私立大学の志願度が上昇している。次に各大学の改革等を見てみたい。大きな変化があった年の主な改革を吹き出しに示した。その内容を見てみると、学部新設、大学統合、キャンパス移転等が、志願度の上昇と概ねリンクしている。学部・学科の新設や大学の統合は、企業で言い換えれば商品ラインアップの充実であり、良い商品が生まれれば顧客の支持を得るということが、大学にも当てはまることが分かる。キャンパス移転は、通学を主とした授業形態のなかで、高校生はできるだけアクセスが良い場所を求めていることが分かる。ただ、キャンパスの移転だけでは、上昇した志願度を維持・向上することは難しいとも言えるだろう。3つ目は高校生に分かりやすい広報、伝わっているかという点である。吹き出しに示した改革と志願度の上昇を比較すると、改革の前から志願度が上昇していることが分かる。学部新設や統合、キャンパス移転は、大概改革の前から広報をスタートする。つまり、改革したときではなく、高校生に伝わったときに志願度が上昇するのである。「近大マグロ」の広報で話題となった近畿大学、箱根駅伝で4連覇を成し遂げた青山学院大学は、その時期に志願度が上昇している。高校生に、どのように伝えるかということも志願度アップの大きなポイントなのである。onsideration志願度に影響を与えるのは「社会環境」「大学改革」「高校生への広報」15回の調査の変遷から見えてきた高校生の志願度の変化上位10大学の変遷C

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