カレッジマネジメント234号
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コロナ禍で自らの提供価値を再確認情報発信の手法を変えて来場者増を実現30リクルート カレッジマネジメント234 │Oct. - Dec. 2022日本を代表するテーマパークの「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」(以下「USJ」)。若者からも人気のスポットだが、ここ数年は中高生の来場者数が減少傾向だったと、同社マーケティング本部で10代向け施策を担当する「TEENチーム」の佐藤里南氏は語る。「ネットの普及で友人とリアルな場で遊ぶ機会が減ったことや、USJの情報発信の内容や方法が若い世代にとって『自分ごと』になっていなかったことが、中高生来場客の減少をもたらしていました。そうした事情で若い世代向けの施策が求められていたところに、新型コロナウィルスの感染拡大が起きたのです」2020年2月、USJは緊急事態宣言を受けて営業休止期間に入った。マーケティング本部ではその間、USJの存在意義や、自らが社会に提供できる価値を再確認するための会議を何度も行ったという。そこで導かれたのが、「USJは友人との絆を深める場」という結論だ。「若い世代の幸せとは何か。そして、それを実現するために何ができるのかを徹底的に議論しました。そして、オンライン授業が増える一方、学校行事が軒並み中止となり、思い出を作れないまま卒業し友達と別れることになる中高生に対し、『一生モノの思い出を作れる場』という役割を果たそうと決めたのです」10代に向けたブランディングについて企業に聞く© NintendoUniversal Studios Japan TM & © Universal Studios. All rights reserved.「友人との絆を深める場」という価値を伝えるため、USJでは情報発信のやり方を大きく変えた。「大人はテーマパークを、乗り物に乗って楽しむ場だと考えがちです。しかし中高生は、何でもない芝生の上で『映(ば)える写真』を撮る等、お仕着せではない楽しみ方を各自で見つけています。彼らが重視しているのは、『自分なりの楽しみ方』が味わえるかどうかなのです。そこでCMを作る際にも、新アトラクション等に焦点を当てるより、中高生が自然に楽しむ場面を多く取り込むよう心がけました。また、TikTokやTwitter等SNSでの出稿も増やしています」こうした取り組みにより、「中高生が数あるプレイスポットのなかで、USJを選ぶ率」は大きく伸びたそうだ。また、2021年と2022年の春には、学生応援キャンペーンの「ユニ春(ユニバル)」を開催。その一環として企画された学生限定価格の「ユニバーサル年間パス」は、予想を大きく上回ユニバーサル・スタジオ・ジャパンマーケティング本部 TEENチーム佐藤里南氏olumnCBRANDをつくるユニバーサル・スタジオ・ジャパン「友人との絆を深める場」という価値を明確化中長期的視点でUSJファンを増やす施策を打った

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