カレッジマネジメント234号
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年2回の学科・研究科との協議会でブランド、ビジョンの浸透を図る社会の変化・ニーズに応じて建学の精神を発展させブランドとしてメッセージングしていく特集01図表2 響学スパイラル概念図37があります」と西本学長は話す。理事会が経営面から社会のニーズを見極めて学部・学科の開設に取り組めば、教学マネジメントに当たる大学側も、西本学長や4人の副学長、教務部長ほか主要組織の部長らが2050年に向けて武蔵野の教育はどうあるべきかと議論を重ね、大学に係る各所が協働して「武蔵野大学2050VISION 5つのチャレンジ」や響学スパイラルを打ち出してきた。5つのチャレンジとは、「自己と世界を問う」「未来の世界を創るCreativeな実践者の輩出」「AI世界を先導するMUSIC(Musashino University Smart Intelligence Center)」等で、中長期計画にて具体的な施策とアクションプランに落とし込まれている。響学スパイラルは、「問う」「考動する」「カタチにする」「見つめ直す」という4つのステップを繰り返しながら学び、成長していく武蔵野独自の学修法(図表2)。2022年度より本格的な導入が始まっており、シラバスにも科目ごとに響学スパイラルをどう組み込んでいるかを説明する項目が加えられている。こうした方針を掲げた際に課題となるのが学部・学科への浸透だが、武蔵野は全20学科・13研究科ごとに毎年2回ブランドビジョン協議会を実施。「自分達の学科・研究科は全学のブランドの中でどのような役割を担うのか」「他大学の同学科・研究科とどう異なるのか」「学科・研究科として何をブランドとして考え、どのように達成していくのか」等の議論を通して浸透を図っている。「ここ数年で、協議会での学科・研究科の自主性や主体性が高まってきているし、全体的な傾向として、学科ごとに目指すブランドイメージに近づく成果が出始めています」と西本学長は評する。例えばデータサイエンス学部では、学部生のうちから学会で発表することを推奨しており、開設年の2019年度から国内学会で78件、海外学会で22件発表。また法学部では、法曹界に人材を送り出すべく2016年より「法曹・士業プログラム」を展開しており、2014年の学部開設以降、のべ58名の法科大学院合格者を輩出している。そして、開設2年目に入ったアントレプレナーシップ学部では、これまでの起業件数が4件、起業に関わった学生は10名に上り、「4年後が楽しみになるペース」と西本学長は期待を寄せる※。このような学部・学科や教育の開発・改革に通底する武蔵野の精神を高校生に発信し、ブランドへの理解を高めていくのは容易なことではないだろうが、広報上も様々な工夫があるという。具体例の一つが、2023年入学希望者向けの大学パンフレットでの学部・学科案内だ。目次において「SDGsと大学での学びは、どうつながる?」と見出しを立て、各学科の学びとSDGsとのつながりから学科検索ができる作りにした。社会ニーズであるSDGsと大学の理念や特徴を紐づける仕組みだ。さらに2024年には法人創立100周年という節目も迎える。「響き合って、未来へ。」という100周年記念事業メッセージを掲げ、「武蔵野の過去と現在と未来が出合って響き合う場にするとともに、次の100年後に意味があったと振り返ることができる現在にしたい」と西本学長は意気込む。「予測不能な100年後に向けて、我々にできることは種まきだけ。ただ今後は、自分の幸せだけでなく、全ての人の幸せを願う心がより一層大事になる時代がやってくることは間違いない。これはまさに『生きとし生けるものが幸せになるために』という本学の建学の精神と重なるところで、それをいかにして学生に届きやすい形で伝えていくか」と西本学長。建学の精神から発展した強固なブランドに基づく改革が、今後どのように進められていくか目が離せない。 (文/浅田夕香)※各学部の成果は2022年7月時点の数値大学ブランドを決めるドライバー​

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