カレッジマネジメント234号
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ブランド戦略の第3の柱はDX特集012022200820092010201120122013201420152016201749「本学には早稲田大学や慶應義塾大学のような知名度はありません。ですから、まず高校生や高校の先生方に知ってもらうことが課題でした。しかし、従来通り他大学と同じような広報戦略を採っていたのではそもそも興味を持ってもらえません。ロボット、宇宙を打ち出すことで、まずは千葉工業大学の存在を知ってもらい、それを入口に『ほかにもこんなことが学べるのか』と他学部・学科にも関心を広げてもらいたいという狙いでした。要は小売店が売れ筋商品を目立つ店頭に並べるようなものですね」ここで、同大学のブランド戦略の経緯と中身を振り返っておこう。最初にこの戦略に舵を切ったのは2003年。学内に未来ロボット技術研究センター(fuRo)を開設したことがきっかけだった。同センター所長・古田貴之氏を中心にメディアへの露出を増やしていった。「大きな転機となったのは2011年の東日本大震災後、東京電力福島第一原子力発電所の事故現場でfuRoが開発した災害対応ロボット『クインス(Quince)』が活躍したことです。米国のロボットなどが探査に失敗するなかでクインスだけが内部調査に成功し、社会的に大きく注目されました。その後のメディアの取材も一気に増加し、結果として本学の名前も広く浸透することになりました」このほか、同大学惑星探査研究センターが、小惑星探査(人)150,000120,00090,00060,00030,00017,65319,79522,1739,877志願者数は延べ人数。2学部、3学部を併願した場合、2人、3人とカウントされている0図 千葉工業大学の一般選抜志願者数の推移(2008〜2022年度)33,91430,026機「はやぶさ2」の光学航法カメラ、中間赤外カメラなど4つの装置の開発・運用に関わったことも話題となった。 このように千葉工業大学のブランド戦略は、単なるイメージ戦略にとどまらず、具体的な研究成果による社会貢献や社会へのアピールが伴っていたことが大きい。2012年には東京スカイツリー®の併設施設「東京ソラマチ®」に「東京スカイツリー®タウンキャンパス」を開設。同キャンパスは、ロボット技術や惑星探査プロジェクト等に関して、同大学の研究成果を体感できる展示が行われており、見学に訪れた修学旅行生等に「ロボット、宇宙といえば千葉工業大学」と印象づけることに成功している。未来を見据えたブランド戦略に取り組んできた千葉工業大学は、既に次なる戦略にも着手している。2021年に、デジタルトランスフォーメーション(DX)などによる社会変革について研究する「変革センター」を設立。「今後は、DXをロボット、宇宙に続く第3の柱として、新たなブランド戦略を進めていきたい」と、日下部氏、大橋氏は今後の構想を語ってくれた。76,49574,46650,88842,199108,707103,26990,87678,905139,074(年度)(文/伊藤敬太郎)大学ブランドを決めるドライバー​2018201920202021

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