カレッジマネジメント234号
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ファーストコンタクトとなる情報は短く特集0151――グルーピングされた学校や、偏差値ランキングからしか選べないと。四元 特徴がないものに対しては、ランキングという指標が参考にされる傾向があります。現状多くの大学は、正直言って無個性で特徴がないと感じています。高校生も同様で、何を選べばいいか分からないから誰かに同調しておく、ランクの高い大学に行ってリスク回避しておく、という考え方になる。いわゆる「社会的証明」と言われているものです。大学が、ランキングではない方法で自分達のアドバンテージを語るのであれば、いわゆる文字情報で説明するよりも、卒業生にこういう人がいるとか、あるいはこういう先生がいるといった、「人」にフォーカスして情報を伝えるほうが、伝わるのではないかと思います。人が一番興味を持つのは、人ですからね。中根 四元さんのお話、非常に同意しますね。私は記者の時代、ある女子大学の連載企画で、活躍している卒業生を25人ぐらい、足掛け4年ぐらいかけて取材させて頂いたのですが、記事をホームページに上げるとアクセス数のトップ3を常に維持していました。卒業生の様々な分野での活躍は、多くの人がロールモデルとして非常に注目するのだということを経験的に認識しました。四元 そういった「理想の自己像」となる情報を発信するときには、ステレオタイプに職業別で紹介したりせず、今後多様化する働き方や生き方を切り口に伝えるべき。企業ブランドにおいても、企業側がただ自らのスペックを消費者に分からせようとするのは最悪です。消費者としては、それよりもその企業の商品を使う「私がどうなれるか」という、中根 とはいえ、現状は高校3年生の夏休みの段階になっても、「MARCHであればどこでもいい」「早慶なら学部はどこでもいい」と話す子ども達がまだいることにも悩まされています。「私の話」として知りたいのです。だから、魅力的な生き方をする卒業生を多数送り出していることを伝えれば、高校生は「この大学に入って勉強したいと思える」動機につなげられると思うのです。――未来の自己像みたいなものが、人間らしく滲み出てくるものに共感するという感じでしょうか。四元 そう思います。一方で、学生側には「10年後の自分は、何をしたいか」という思考が欠けている。理想の自己がないから、リスクを下げるためにランキング上位の大学に行っておくほうがいいという判断になっていると思います。だから、先ほどの中根さんの学校の取り組みのように、「10年後の自分は何をしたいか、どうあるべきなのか?」ということや「選択肢は色々あるよ」と、人生の幅を広げるような教育がもっとなされるべきだと思いますね。――現状、「理想の自己像」がない高校生に対して、スペック以外の接点から、大学が自校の情報を高校生に届けるためにはどうしたらいいのでしょう。四元 世の中にある情報量がこれだけ増えているなかで、届けたい人に届くなんて言うことは狙ってできるものではない。多くの情報のなかでたまたま見つかる状態だと考えたほうが良いでしょう。とはいえ、バットも振らなきゃ当たらないように、情報も出さなければ届かないから、届くだろうと信じて情報を出すしかない。 ただ一つ工夫できることはあります。それは、たまたま出合う情報を短くすること。ファーストコンタクトで出会うが長いと人は振り向きません。そのうえでもし興味を持てれば検索する。そういう情報の構造は意識したほうがいいと思います。 大学ブランドを決めるドライバー​

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