カレッジマネジメント234号
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対談中根 それから、学内にどんな先生がいるのかといったような、自分の大学のことについてしっかり認識していない大学関係者もいるように思います。私が常々思っているのは、やっぱり自分の大学のことを分かっている人は、自分の大学に対して誇りを持てている人ですよね。誇りを持っている人が語る言葉には重みがあるし、何が最も重要なポイントなのか分かる。記者時代、そういった人から取材した記事は見出しもリードも書きやすかったです。「顧客は学生」なのは、高校も大学も一緒52――メッセージが明確ということですね。中根 実は、今私立の中高一貫校で人気のところは、校長のメッセージが生徒募集においてとても大事で、トップのメッセージが人気校を作っているところがあると思います。特に、私立の中高一貫校は非常に多いような感じがします。――学校のトップのメッセージが、その学校の人材育成の考え方として明確に伝わっているということなのでしょうね。四元 おっしゃる通りだと思いますね。さらに言えば、人の心を打つ物語というのは、逆境や理不尽を乗り越えた話。高校や大学のトップがそれらをどう乗り越えて学校を作ってきたのかという話には、高校生や保護者が惹かれるものがあると思います。詰め込み型の知識ではない、トップのスピリッツのようなものですよね。大学も高校も、人間の集団。知識のインプットだけなら一人で勉強すればいい。先生がいて、仲間がいて、人々によって精神が形作られる。そういう場であるという面はもっとクローズアップされていいと思います。――ブランドは絞り込むことが大事だというお話がありました。ただ一方、絞り込むことが怖いので、保険をかけてあれもこれも重視しようとする状況は、企業にも大学にもあると思っています。四元 よく分かります。でも、そういった姿勢ではいつまでたってもブランドはできません。理想的顧客像の魅力に惹かれて、普通のリアル顧客として寄ってくるというのがブランドの構造です。ですから、理想の顧客像を絞って明確にするほど、リアルな顧客が広がるのです。――そうですね。コロナ禍でオンラインでの知識の提供が一般的になったからこそ、精神を作る場として大学の価値が注目されるべきかもしれませんね。 中根さんは、大学は、そういったスピリッツも含めて高校に届けられていると感じますか?中根 いえ、そもそも大学は中高を見ていないんです。私も高校現場に来て感じているのですが、今の高校現場でどんな教育をやっているのかを大学があまりご存じないように感じます。実際にうちの学校に来て頂いて見学されると、「今はこんなにすごいことが行われているのか」と皆さん非常に驚かれます。そういった認識のずれが存在していると思います。ですから大学の方々には、ぜひ高校の現場に足を運んで、どのような教育が行われているのかをもっと知ってほしいと思うのです。――リアルの顧客は理想的な顧客に憧れてついてくるという話が先ほどありましたが、今の中根さんのお話からは、大学がそもそも顧客である高校生についてあまりにも知らないという課題が窺えます。こういった「顧客の捉え方」については、どう考えればいいでしょうか。四元 高校にしろ大学にしろ、基本的に「顧客は学生」という点で一緒ですよね。顧客である生徒・学生の立場から見たら、高校や大学がお互いもっと知り合い一つになって、協力するのが当たり前。生徒・学生の立場から考えれば、教育の提供者側がつながっていないほうがおかしいと思います。ross talkC大学は高校現場にもっと足を運んでほしい。学生という同じ「顧客」の今をもっと見て、知るべき。(中根)

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