ブランドの責任者は大学トップ特集0153――実際には、高校と大学の教育、さらには就職と全てが途切れていて、生徒・学生は今やりたいことと未来をつなげて描くことが難しいように感じます。中根 確かにそう思います。ただ、最近は探究学習を通じて、自分が将来やりたいことや目的意識が明確になっている生徒達が出てきています。そういった生徒は、自分で大学も探すようになっています。うちにユニークな生徒がいます。たまたま図書室で仏像の絵を見て絵を描き始め、ある時に曼荼羅の色彩に魅了され、さらに仏教学や哲学も全部自分で突き詰めて学んでいくうちに、密教の世界にはまってサンスクリット語を勉強してみたい、と。大学でサンスクリット語を教えているところを調べ、今、そうした大学で学ぼうとしています。大学側もその生徒を面白いと受け止めて、大学の知を提供してくれようとしている。こういった小さな接続の例が、一部で出てきていますね。――以前は、「出る杭は打って、全員同じようにして就職させる」というのが日本の姿でしたが、探究学習が進み始めたことで、やりたいことの実現を支援しようという社会に変化してくるかもしれませんね。四元 Educationの語源は、もともと植物の力を引き出して育てるっていう意味なんですよ。つまり、放っておいても成長するものの力をさらに引き出す手助けをするっていうことですよね。単にテストで良い点数を取るためのトレーニングは、本来のEducationではないと私は思っていますよ。探究学習のように、学校の資源を使って、もっと大きく育ててあげる。素晴らしいと思いますね。――最後に、大学のブランディングにおいて何が大切なのか、大学へのメッセージも含めてお願いします。四元 「入学してから10年後にどうなれるのか」。それが大学の価値でしょうね。学生は10年後の自分を買っているのです。もちろん、大学としては10年後のあなたはこうなっていると断定はできない。だからこそ大学が理想の卒業生像としてその価値を示す。そこに惹かれた高校生が、自分事として考えてもらえるように努めることが大事なのではないでしょうか。それから、重要なのはやはり大学トップの姿勢です。トップがまずブランディングの重要性について認識をし、自ら先頭に立つべきでしょう。企業においても、ブランドの最終責任者はCEOであるという考え方が一般的です。偏差値的な成績のレベルでは語れない、理想の顧客像つまり卒業生像について、トップ自らが明確にしてほしいと思います。中根 さらに高校の側でも、入口の偏差値や大学名のグループとかやランキングだけで選ぶ状況から脱却して、自身のキャリアや将来像を、高校生が描けるような教育へと深化させていくことが大事だと思います。また生徒・学生の視点に立って、大学と高校がお互いを知る努力をし、具体的なコラボレーションを生み出したい。そのためにも、大学には実際に行われている高校教育について、とにかく授業を見て、顧客を知ってほしいですね。――大学側は、リアルな顧客である高校生が今どのような学びを経験しているのか知る努力は必要。一方で理想的な卒業生像を明確にすること、分かりやすいメッセージで学外に発信すること。トップのリーダーシップによってそれらを実現し、やり切ることで初めて、ブランドが確立すると言えるのですね。 今日はありがとうございました。(文/金剛寺 千鶴子)大学ブランドを決めるドライバー大学トップ自らがブランドの重要性を認識をし、先頭に立って「理想の顧客像」を明確に示すことが重要。(四元)
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