カレッジマネジメント234号
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71学生の半数以上が外国人であり、教育・研究が英語で行われ、英語で論文を書くことを求めており、その論文の量や質は、日本の大学の中でもズバ抜けている。(2019年のNature Index では世界9位、ちなみに東京大学は40位)同大学院は、「専門領域×英語」を世界レベルで教育・研究する大学を目指している。このような、技術を2つ掛け算するようなニッチ戦略は、新設校でも可能性が高いと言える。大同生命㈱は中堅の生保であるが、全国の税理士と提携し、中小企業のオーナー向けの定期保険では、日本生命、第一生命をも寄せつけない強さを誇っている。中小企業への販売チャネルをおさえていることが、その要因である。大学で言えば、授業を届けるチャネルとして、対面、放送、インターネット等がある。かつては遠隔教育としてはテレビ・ラジオを利用した放送大学が典型例であったが、ネット時代を迎え、インターネットを介して世界中のどこででも学べる大学として、ビジネス・ブレークスルー(BBT)大学は誕生した。世界ではMOOCs等、オンラインで授業を提供する大学は増えているが、日本で全ての授業をオンラインに特化して提供している大学は、BBT大学が代表例であろう。BBT大学では、一方的に講義を流すのではなく、「Air Campus」という遠隔教育用ソフトを用いて、双方向、参画型の討議も可能にしている。ちなみにBBT大学は、新型コロナウイルスが感染拡大する中でも、最も影響を受けなかった大学として知られている。極めて限られた特殊なニーズに対応するニッチ戦略であり、バスの中の運賃箱、行先表示器、押しボタン等に特化したレシップ㈱が典型例である。バスの中はスペースが限られており、かつ常に振動していることから、独自の技術が求められ、同社は大手が入れない市場でトップに君臨している。大学で言えば、航空パイロットの養成には、かなり特殊なカリキュラムが必要であるが、熊本の崇城大学工学部航空【注】(※)他に東海大学、桜美林大学、法政大学等にもパイロット養成コースがある。【参考文献】・ Hamel G. and C. K. Prahalad (1994), “Competing for the Future”, Harvard Business Scholl Press. (一條和生訳〈1995〉『コア・コンピタンス経営』日本経済新聞社)・ 伊丹敬之(2012)『経営戦略の論理 第4版』日本経済新聞出版社・ Kim W. C. and R. Mauborgne, (2005), “Blue Ocean Strategy: How to Create Uncontested Market Space and Make the Competition Irrelevant”, Harvard Business School Press (有賀裕子訳〈2005〉『ブルー・オーシャン戦略』ランダムハウス講談社)・ Porter M.E.(1980)“Competitive Strategy: Techniques for Analyzing Industries and Competitors”, Free Press (土岐 坤・中辻萬治・服部照夫訳〈1982〉『競争の戦略』ダイヤモンド社)・ 嶋口充輝(2000)『マーケティング・パラダイム』有斐閣・ 山田英夫 (2021) 『競争しない競争戦略 改訂版』 日本経済新聞出版社操縦学専攻等は、パイロット養成を看板としている(※)。また、宗教系の大学にもその例を見ることができる。大谷大学(学部定員768名)、高野山大学(学部定員50名)等が、少人数ながら僧侶育成の教育を行っており、他方、専任教員全員がクリスチャンの東京基督教大学(学部定員33名)もニッチ戦略の大学と言える。同大学は、専任教員1人に対する学生は7名と、少人数教育を特長とした全寮制の大学であり、教会教職者等の育成を行っている。特殊ニーズ・ニッチ戦略は、資格系の大学に最も有効である。市場は衰退期に入ったが、その製品がなくなると困るものを提供することによって、存続する企業がある。レコード針の㈱ナガオカトレーディング、ボーリング球の日本エボナイト㈱、大きい企業では、フィルムを使ったインスタントカメラ(チェキ)を世界で1社作り続けている富士フイルム㈱もその例に入る。大学で言えば、秋田大学国際資源学部や信州大学繊維学部等が典型例であり、今後市場は大きくはならないが、決してなくならない分野である。(残存ニッチは国公立の例が多く、私学が生き残るのは難しい面もある)競争しない競争戦略の(2)不協和戦略(3)協調戦略については、次号235号(2023年1月1日発行)掲載の本稿後編に続きます。b.チャネル・ニッチc.特殊ニーズ・ニッチd.残存ニッチ

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