カレッジマネジメント234号
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星稜の人間教育「星稜学」を進める一歩でもあります。中高一貫校を設置する前に、私には経営者としてまず、2つの附属幼稚園が抱える約1億円の赤字を解消するという課題がありました。そこで両幼稚園を認定こども園に改組することでこれを1年で改善し、中高一貫校を設置することができました。2017年、教育スローガン「『GROW! SEIRYO』世界で活躍する個性豊かな星稜生に “成長する” ことを願って。」を掲げ、中高一貫教育を開始しました。中高6年間を基礎・応用・発展の3つのタームに区分し先取り教育を実施することで、大学受験に必要な基礎学力の早期確立と十分な受験勉強期間を確保しました。また全生徒にタブレットを導入したICT教育や、サイエンス・キャリア・グローバルの各プログラムによる主体的探究を推進してきました。中高は今年完成年度を迎えるので結果が楽しみです。星稜中学・高等学校はスポーツが強いことで有名ですが、スポーツだけでなく進学希望の生徒に応えようと、中高一貫校のための総合寮「GROW DORM」を昨年2月に竣工しました。生徒の進学希望を確実に叶え、より堅固な進学実績を築こうとする、「スポーツの星稜」から「教育の星稜」へ転換を図る環境整備でもあります。新しい寮は既存の3つの寮に比べ、学習と食生活を全般的に支援する寮です。「人を育てる」という創始者の思いを込め、社会性・協働性を育むことを目的に2人1部屋の設計とし、共有部分には3つの学習室を備えチューターを配置し、寮内においいなおき・しんや1960年生まれ1984年 学校法人稲置学園入職・星稜高等学校数学教諭1990年 学校法人稲置学園本部次長1999年 学校法人稲置学園経営企画室長 2001年 学校法人稲置学園経営改革推進室長2004年 学校法人稲置学園経営企画部長2006年 星稜女子短期大学(現金沢星稜大学女子短期 2010年 学園創立80周年記念事業企画・実行委員長2013年 学校法人稲置学園副理事長就任2016年 学校法人稲置学園理事長就任(現在に至る)学校法人稲置学園理事就任大学部)副学長て学習指導を受けることもできます。学園創立90周年の今年は、理事長として一つのターニングポイントにもなる年です。私は常々、学園の守りを固めるという意味で、「ガバナンスの強化」「危機管理体制の構築」「自己点検評価の充実」の3つを重要課題として掲げてきました。この1年を通過点としつつ、次の100年(2032年)に目指す姿が実現できているかを自己点検しながら、時代の流れに即した教育振興に邁進します。そのために、「就職の星稜」を基盤としながら「教育力の星稜、授業力の星稜」を目指します。既に新キャンパスの用地を取得していて、スポーツ施設と教育環境を充実させる予定です。また学問の新領域として、経済学部に第3の学科を構想中であるほか、かつてのグローバルのように今は「AI戦略2019」の大きな流れがあるので、本学にふさわしいデータサイエンス系の新しい学びの形を検討しています。そしてこれからも本学園が軸とする「星稜の人間教育(星稜学)」とは何かを模索しながら、経営者としては、教育と経営とは両輪であり、しっかりとした教育環境を作るためにも健全な財政基盤を作っていきたいと考えています。(文/能地泰代 撮影/杉浦康之)73「教育力の星稜、授業力の星稜」を目指す

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