カレッジマネジメント234号
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これからの時代に必要なスキルセットを文理を問わず提供する副専攻制度で学生の意欲や目的に応じた学びを設計77大学である。文系大学でこうした方針を打ち出せたのはなぜなのか。教育リソースをどのように捻出したのか。それについては、2つの要因があるという。経済学部でかつて高等学校の「情報」の教職課程を持っていたこと、そして国際学部で社会調査士の資格が取得可能な科目を持っていたことだ。こうしたカリキュラムで既に展開していた科目により、数理・データサイエンス・AIモデルカリキュラム(リテラシーレベル)の要件の多くを網羅できたという。では、副専攻プログラムの具体的な内容を見ていこう。3学部それぞれでAI・データサイエンス教育を構築するのではなく、全学共通の副専攻制度を採用した理由について、髙橋氏は3点を挙げる。まず、AI・データサイエンスの利活用は分野横断的であり、所属学部に拘わらず履修可能な制度が必要だったため。次に、副専攻は学部学科の主専攻に加えて、もう1つの専門分野をコンパクトに学ぶことができる仕組みで、目的に直結した学びが可能であるため。そして、既に副専攻「エアポートNARITA地域産業学」、副専攻「日本語教員養成課程」の実績があり、柔軟なカリキュラムの構築に利点があったためである。副専攻「AI・データサイエンス」では所定の単位・資格を取得すると大学独自の「修了証明書」が授与され、卒業単位にも認定される。また、いわゆる文系の学生にとっても、学ぶことの意義や楽しさ学長中山幸夫 氏リクルート カレッジマネジメント234 │ Oct. - Dec. 2022AI・データサイエンス教育センター長髙橋和子 氏IR・広報室長工藤龍雄 氏による新たな価値創出データサイエンス(DS)教育の最前線敬愛大学は2019年より副専攻「AI・データサイエンス」を開設し、その内容が2021年6月にMDASHリテラシープログラムに認定された。その内容と背景にある考えについて、中山幸夫学長、AI・データサイエンス教育センター長の髙橋和子教授、IR・広報室長の工藤龍雄氏にお話を伺った。敬愛大学は2030年までに達成すべき目標として、「敬愛大学ビジョン2030」を掲げている。そこには、「新たな時代の変化に対応する教育~Society5.0に対応できるAI人材を養成~」として、「Society5.0の時代に、『人間の強み』を発揮する想像力(Imagination)と創造力(Creativity)の双方を豊かに備えてAIを活用できる人材を養成する」とある。中山学長は、「変化が激しく予測困難な時代をどのように生きていくのか。本学の学生にはデジタル時代の読み書きそろばんとしてAI・データサイエンスの基礎力を修得し、社会を積極的に支える人材になってほしい」と話す。その取り組みの1つがこの副専攻であり、「建学の精神である『敬天愛人』、即ち人や人の作る社会・地域をより良くするのに貢献する具体的な方策の1つとも言えます」と続ける。建学の精神の具現化であり、これからの時代に必要なスキルセットを教育に組み込んだ内容でもあるのだ。しかし、敬愛大学は経済・国際・教育という文系3学部の事例report_08 敬愛大学MDASHリテラシー認定プログラム副専攻「AI・データサイエンス」

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