82に、狭く専門的な領域だと捉えられがちだ。もちろんそうした領域もあるが、それは本来、法学部で弁護士という専門職に就く人もいれば一般企業に就職する人もいるのと同じレベルの多様性のはずである。翻って探究型OCも、こうした「これまで美大を選ばなかった層にいかにアプローチするか」という文脈で設計された。少子化のみならず、前述した「通常の志願校となりづらい」美大の特性から、美大の志願状況は近年大変厳しい。ムサビは美大のなかではいわゆるブランド校だが、そのムサビですら、従来の美大志願者だけでは低調な志願状況に直面し、「これまで美大を選ばなかった」層を獲得する必要性に迫られているのが実情だ。次代にフィットする教育を従前から展開しており、社会の要請に今こそ応えられるという自負、そして厳しい募集環境という課題意識から出てきた打ち手の1つが、今回のOCなのである。では、その内容を見ていこう(図2)。探究型OCは「主体的に問いを見つける」ことを目的としたFIND Programと、「問いをかたちにする」ことを目的としたMAKE Program(図3)の2段階で構成されたワークショップだ。プログラムの開発にあたっては、一般社団法人i.club(代表 小川 悠)とともに取り組んだ。i.clubは従来から高校の探究学習プログラムを提供していたが、コロナリクルート カレッジマネジメント234 │ Oct. - Dec. 2022禍においてオンライン探究プログラム「innovationGO」を展開していた。小川氏は新学科と同時に設置したソーシャルクリエイティブ研究所の客員研究員でもあり、「innovationGO」と美術大学の学びをかけ合わせてムサビと共創で開発したのが、探究型OCとなった。プログラム全体を通して、ムサビの学生がメンターとしてチームにつき、同世代で話し合いながら、自らの「学び」についての自分の課題を見出し、それをどう解決するかを磨き、優秀なアイデアは表彰される。美大のスキームが通常の課題解決に有効だと知ってもらう目的に照らし、FIND Programだけの参加も認められている。開催要項詳細は図2を参照されたい。もともとは地域でのリアル開催を想定していたが、コロナ禍でその実施は難しく、全面オンラインに切り替えたという。結果的に「全国津々浦々の高校生がスマホ1つで集う多様な場が実現した」と河野氏は振り返る。「探究型OCのワークショップの根幹は、多様なメンバーのチームで個々の問いを見出し、それを磨いていくというプロセスです」。実社会では自分1人で成果を出せることは少なく、多様な協働が前提である。価値を創出するためには他者の力を引き出し、自らの当初の問いの変化を楽しみながら、横断的に物事を捉え、アウトプットを磨いていく取り組みが必要になる。美大では「デザイン思考」と「造形手法」というアプローチでそうした問いの発見・磨きこみを行っていく。そうしたプロセスを圧縮して体感することが場の目的だ。非美大層に美大の魅力を訴求するには、体験により「課題発見や図2 開催概要美大教育のエッセンスを圧縮したワークショッププログラム入試は社会へのメッセージ
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