カレッジマネジメント234号
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83課題解決に使える」という実感値を持ってもらうことが一番であり、それが最良の高大接続にもなり得るという仮説のもと設計されている。2021年に実施したプログラムでは自分の考えを伝えるために絵という表現方法を用い、「いかに思う通りには伝わらないのか」を体感してもらい、「本来こう伝えたかったのに実際はこうだった」という事実から「どうやったら伝わっただろうか」という思考が始まった。「それを4年間続けているのが美大の学びで、その片鱗を90分にしたのが2022年のプログラムです」との河野氏の言葉の通り、まさに「自分で考えていることと他者に向けてのアウトプットには差が生じる」「問いには必ずしも答えがない」「そこにどういう自分の軸を通すのか」といったことを体感するプログラムなのである。高校で進む探究教育の下支えになる考え方と言えそうだが、そこにはやはり「美大は特殊だろうから参考にならない」という無意識の壁があり、そうした推進力を得るのは機を待つことになりそうだ。募集プロセスでもあるが主目的が啓発なので、対象は高校3年生に限らず高校生としている。「いずれ入試も含め設計することも考えられますが、現状はまず実績を作るのが先」と河野氏は言う。しかし、本来のブランド力が通用しない領域に打って出ているわけなので、決して順調とは言えない状況だという。それでも、「例えば工学部や社会学部のように、アウトプットの方策や手法としてのデザインに触れる機会がある学問領域の志願者に、美大も選択肢に入ることを気づいてほしい。量的な目標は特に定めていません。こうしたアプローチを続けることで、美大の学び全体の底上げや、潜在層の掘り起こしにつながると考えています」と河野氏は述べる。昨年度の参加者アンケートによると、「美大生と交流できてよかった」「美大のイメージが変わった」「全国の高校生と集まって話し合う、なかなかできない経験をさせてもらった」「オンラインでここまで活発な話し合いができることに感動した」等、概ね好評であった。また、男女比はやや女性が多かった。また、参加者のなかには最終的に受験した生徒もいたという。実施した手ごたえとして「高校生には美大のメソッドがちゃんと通じるし、楽しんで学ぶことができていた」と河野氏は総括する。一方で、昨年はMAKE Programの時間が短かったという反省があり、今年はMAKE Program単体で2日間に仕立て直した。「初日に考えた内容を壁打ちし合い、その内容を持ち帰って振り返り、2日目にまた挑むといった仕立てです」(河野氏)。今年のプログラムの反響が今から楽しみだ。リクルート カレッジマネジメント234 │ Oct. - Dec. 2022(文/鹿島 梓)図3 MAKE Program概観OCで示す美大教育と探究教育との親和性探究世代との親和性への期待

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