カレッジマネジメント234号
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tnemeganaM ytisrevi IgnitavonnnU情報・システム研究機構監事 東京家政学院理事長92想定を上回るペースで進む18歳人口の減少、世界における順位低下が続く研究力等、大学を巡る状況はさらに厳しさを増しつつある。他方で、日本経済の持続的成長に向けた人的資本の強化やイノベーション創出等、大学への期待は高まる。大学の内部に目を向けると、教育の質保証、学修成果の可視化、きめ細やかな学生支援、外部資金獲得、社会・地域連携、国際化等、取り組むべき課題が増え続けている。2022年8月に科学技術・学術政策研究所(NISTEP)が公表した「科学技術指標2022」では、他国・地域が論文数を増加させるなか、日本は横ばいが続き、Top10%補正論文数については世界第12位とさらに順位を下げる結果となった。同月にNISTEPが公表した「科学技術の状況に係る総合的意識調査(NISTEP定点調査2021)」では、研究時間を確保するための取組と研究マネジメントの専門人材の育成・確保が不十分との強い認識が示されている。2021年8月に東京大学教育学研究科大学経営・政策研究センターが公表した「第2回全国大学事務職員調査報告書」(以下「職員調査」)では、現在担当している仕事について「業務量が多すぎるか」を問うた質問に対して、「そう思う」「ある程度そう思う」の合計は61.8%に達している。また、「将来の経営を担う人材が育っていると感じるか」を尋ねた質問では、「そう思う」「ある程度そう思う」の合計が26.1%にとどまっている。大学は高まる期待に応え、増大する課題に取り組みながら、厳しさを増す環境を克服していかなければならない。今後を見通すと淘汰・再編は避けられないだろうが、健全なる競争を通して、個々の大学、ひいては我が国全体の教育力・研究力を高めていく必要がある。これに対して、研究者と職員を対象とする2つの調査結果を見る限り、現状は極めて深刻であると言わざるを得ない。増大する業務のなかで、教員が教育研究により専念でき、職員が経営を担う人材として育つための環境をどう整えるか。そのためには、大学業務の構造を抜本的に変革するしかない。その一つがデジタル技術を最大限に活用した構造改革としてのデジタル・トランスフォーメーション(DX)であり、もう一つが業務の外部化(いわゆるアウトソーシング)である。DXについては本連載で既に取りあげており(本誌第229号、2021.7-8)、本稿では業務の外部化について、学校法人が出資する会社(以下「出資会社」)の活用のあり方と併せて論じることとする。なお、表題の「外部化」にカギ括弧を付したのは、一般の民間会社を活用する場合と出資会社を活用する場合では、グループ内に機能を担保するか否かという点で、意味合いが大きく異なるからである。前述の職員調査によると、「業務の外部委託や大学間で98吉武博通大学を強くする大学業務の構造の抜本的な変革が急務「大学経営改革」間接部門のスリム化と直接部門へのシフト業務の「外部化」と出資会社の活用──大学業務の構造改革の視点と課題

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