カレッジマネジメント234号
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tnemeganaM ytisrevi IgnitavonnnU外部化に際しては、組織内で担保すべき機能は何か、専任職員が担うべき業務は何か、という視点で大学業務のあるべき構造を考える必要がある。他方で、外部化にあたっては留意すべき課題も多い。最大の課題は「委託先の選定と評価」である。外部調達においては、調達先に関する情報の収集、当該企業が提供する財・サービスの質とそれに対する対価の評価がその成否を左右する。このような能力をどう培うかは大学にとって大きな課題である。「費用の下方硬直性」も危惧される。外部化に伴い、契約で取り決めた事項以下の具体的な処理方法は委託先に委ねられることになり、業務の改善が進まないという状況も起きうる。改善を促すインセンティブ等契約上の工夫も必要である。この問題とも深く関わるが、「業務のブラックボックス化」への対応も避けて通れない課題である。加えて、「実務経験の付与機会の減少」に伴う人材育成面での問題についても考えておかなければならない。最後に、外部化が結果として総費用の削減につながったのかどうか、「費用削減効果の検証」を行う必要がある。企業でも、社員数や人件費は削減されたが、外注費が増加し、トータルでの費用削減効果が得られないという状況は起きうる。大学においてもこの点は絶えず確認しておかなければならない。これらの課題に対処するためにも、出資会社の活用は有効な方策の一つである。国立大学法人と公立大学法人にも出資は認められているが、研究成果の活用等国や設置団体の政策的要請に基づくものであり、本稿の趣旨には合致しない。従って、学校法人が出資する会社を主に考えることになるが、現時点での会社数等全体を把握できる情報は見当たらない。大学の規模がある程度大きければ法人自らが設立した出資会社を活用することもできるだろうが、規模の面等から現実的には困難な大学も多いだろう。その場合は、他の学校法人の出資会社の活用、または複数法人による共同出資等が考えられる。今後、業務の外部化と出資会社の活用をどう進めるべきだろうか。その手掛かりを得るために、大学業務と出資会社の経営の両方に精通した3名に考えを聴いた。これまでの大学は全てを自己完結させようとしてきた面があるが、自らの力だけで改善・改革ができるわけではない。大学をプラットフォームと考えて、よりオープンに多様な機能を結びつけるという発想も必要なのではないか。法人系の業務は大学に限らずどの組織にもある。それをやりたくて大学に就職した新卒職員はあまりいない。法人系業務の外部化は望ましい方向であり、教育・研究支援系の業務でも外部化の余地は大きい。一方で、教育研究業務は、補助金算定上、外部委託より職員で担当するほうがメリットがあり、外部化すれば消費税負担も生じる。これらを上回る効果を得るためには、受託した側が知恵を出し、持続的に改善を行っていく必要がある。出資会社には、学生納付金として得た資金を学生への還元を含めて大学の中で回していくという目的もあり、また大学が直に手がけにくい活動を出資会社が担うという考え方もある。例えば、広報、システム開発、留学生支援等に学生の力を活用したい場合、出資会社なら学生を雇用しやすい。クレオテックは清掃、警備、施設・設備管理等の業務から出発したが、現在では、国際業務や奨学金業務を一括して受ける等事務委託まで業務範囲を広げている。出資元である立命館の発展に寄与することが最大の使命だが、規模の利益を享受する観点から、この使命に反しない範囲で、他大学へのサービス提供も考えていきたい。早稲田大学は1988年の職員問題総合審議会答申「職員に期待される新しい役割およびあり方」以降、職員の役割や業務のあり方を巡り議論を重ねてきた。その中で、定型的な管理業務から、サービス型業務、意思決定支援業務、高度専門的な管理運営業務、プロジェクト推進にシフトさせることが必要との認識が示され、専任職員、嘱託職員、派遣(前学校法人立命館常務理事)代表取締役社長執行役員・早稲田大学総務部調査役(前早稲田大学人事部長)大学を強くする「大学経営改革」94大学をプラットフォームと考える発想も必要西川幸穂株式会社クレオテック専務取締役出資会社に蓄積される多様なソリューション三浦 暁株式会社早稲田大学アカデミックソリューション(以下WAS)

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