95社員等の役割を明確にするなかで、業務委託の活用を進めてきた。WASは、遠隔教育実現のために設立した会社、チュートリアル・イングリッシュ開発のために設立した会社、教育・研究支援を担う会社等が統合され、今日に至っており、その業務は大学運営支援、学生・教員へのサービス提供、国際化支援、教育・研究成果の社会還元、IT推進、語学教育支援等多岐にわたる。早稲田大学はもとより、広く大学・社会へ貢献することを目指して活動している。早稲田大学というフィールドで培われたノウハウが、グループ内に蓄積されるという点は大きな利点であり、雇用も人事も大学から独立することで自由度が増し、専門性を育みやすいという面もある。早稲田大学への貢献が最大の使命であるが、委託金額の妥当性とパフォーマンスが厳しく問われる等、大学側から評価されるという緊張感は絶えずある。社内に様々なソリューションが蓄積されてきた。今後は個別のソリューションを組み合わせて新たな価値を提供できる、イコールパートナーとして成長していきたい。アウトソーシングでは、人件費は減るが委託費が増える、組織内にノウハウが蓄積されない、一度外部に委託すると容易にその業者を変えられない、といった問題が起きうる。その点において、出資会社を設立してそこに業務を委託することは、グループ内で機能を担保するという意味で「内部化」と考えることもできる。出資会社には、株主である学校法人に利益を還元することを目的に、学校法人と民間会社との取引の間に入って収益を得ることを重視するケースも見られたが、それは望ましい姿ではない。大学業務の効率化・高度化にどう貢献するかに出資会社本来の使命がある。中央大学でも、職員の働き方を一段も二段も引き上げ、経営を担うスタッフとしての成長を後押しするために、定型事務を新たに設立した中央大学ビズサポートに移すこ中央大学常任理事とにした。また、エデュースは大学を設置する16の学校法人が共同出資して設立した会社だが、各大学が個々にゼロから開発していたシステムをパッケージとして開発・提供することからスタートし、ソリューション、コンサルティング等、学校法人に特化した多様なサービスを展開している。大学が真に競い合う領域は何かを見定めたうえで、それ以外の領域では業務を共通化する等、協力して効率化を進めることが重要である。それを推進するために地域単位で共同出資会社を設立することも一つの方法だと思う。伊丹敬之一橋大学名誉教授(現国際大学学長)はその著書『経営戦略の論理(第4版)』(日本経済新聞出版社、2012)で、企業の中核戦略として、製品・市場ポートフォリオ(誰になにを売るか)、ビジネスシステム(そのためにどんな仕事の仕組みにするか)、経営資源ポートフォリオ(その仕事をきちんとやれるように、どんな能力・資源を自分で持つか)、の3つをあげる。その上で、ビジネスシステムの設計の最も基本的な決定は、(1)どの業務を自分で行うか、なにを他人に任せるか、(2)自分で行うことを、どのように行うか、(3)他人に任せることを、どうコントロールするか、の3つであるとしている。企業のみならず大学業務のこれからを考えるうえでも示唆に富む考えである。大学におけるこれまでの外部化は、誰もが疑問を感じることのない領域で行われてきた。他方で、現在進みつつある外部化には、大学間でその考え方や程度に差が生じているように思われる。労働力人口の減少、雇用の流動化や雇用形態の多様化、AIの発達等を背景に、働き方や業務のあり方をどうするかは、日本社会全体が問われている課題である。職員のみならず教員の仕事を含めて、何を自前で行い、何を外部に任せ、内と外をどう連携させるか。大学は真正面からこのテーマに取り組む必要がある。地域単位での共同出資会社設立も一つの方法松本 雄一郎株式会社エデュース代表取締役社長・何を自前で行い、何を外部に任せ、内と外をどう連携させるか
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