学外との接点に関するデータは大学のデータドリブンに親和性あり――一般企業ではトップに立つ人のための教育プログラムなどがあるのでしょうか。両角 あまりありません。本来であれば学長になる前にそういったことを学ぶ場が必要だと思います。大学運営は経験と勘だけでやっていける簡単なものではないからです。経験と勘を裏付けるためにデータを頼りに、学内で議論し、検討しますが、やはり最後に意思決定が必要です。トップという座に立つ前に、そういった意思決定をする経験や一緒に学べる仲間を作るといった場があったほうが良いと思っています。安井 多くの企業でCEOやCIOに就任した人や就任予定者が教育プログラムを受講していることに加えて、彼らのネクストジェネレーションを育成するために、同様のプログラムを準備段階の教育として実施している企業もあります。企業ではこうした動きを意識的に行っていますが、大学でもそういった教育プログラムの必要性がこれから生まれてくるかもしれませんね。両角 そうですね。学部長や副学長、学長を補佐する若手の教授に対して強制的に訓練を受けてもらい、裾野を広げておく。すると学内組織全体にも、そういったことが大事なんだというカルチャーが広がっていく。そういった意味でももっと実施していったほうがいいと思います。図2 役職別にみた管理運営の研修を受けていない割合、研修経験なしの割合(%)6040200安井 企業であれば、課長になった時や部長になった時など、昇進のタイミングで階級別研修というものもあります。両角 大学には教授になったら受けなければいけないといった研修が今はありません。安井 それはあった方がいいかもしれません。ほかの大学から来たら必ずうちの研修を受けなさい、といったことも企業と同じようにあったほうがいいと思います。安井 企業では月次で意思決定しているものを週次や日次までもっと短くしていこうという動きがありますが、大学はお金が入ってくるのは授業料の振り込みや入試のタイミング等ですから、意思決定タイミングが毎月あるわけではないと思われます。経営視点で考えると、データは定性的なものの裏付けとして使っていくべきです。毎月の収入等、定期的な短いスパンで発生する事柄において十分なデータを集め、そのデータを年に一度の大きな意思決定に活かしていく。そういった流れに変わっていかないと安定した経営基盤にならないんじゃないでしょうか。僕らの立場からはそんな風に感じます。そういうデータの使い方を今後考えていったほうがいいのかなと感じるのですが。(注)東京大学大学経営・政策教育センターが2015年に実施した「大学上級管理職調査」より両角教授作成※カレッジマネジメント217号より10理事長以外経営管理職30.7理事長学長・総長以外56.645.2理事長以外学術管理職58.5
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