カレッジマネジメント235号
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ガバナンス改革をソフトランディングするために学長主導型ガバナンスを支える教学責任者懇話会芝浦工業大学は、現在様々な改革を実行推進している。スーパーグローバル大学創生支援事業の採択、キャンパスの再配置、工学部の課程制導入、女子学生募集戦略の導入など、その改革はどれも多彩で攻めの姿勢を感じさせる。さらにこのような施策の意思決定や実行をスピーディーに実践している。これだけの改革推進の背景にはやはりガバナンス改革と、データに基づいた裏付けのある戦略を構築する体制がある。実は芝浦工業大学ではガバナンス改革は文部科学省の推進に先立って2010年から取り組み、2014年に新しいガバナンスを始動させている。ガバナンス改革の核となったのが学長主導型への転換だ。学長選考規程は従来の選挙を廃止し、候補者選考委員会の推薦から最終的に理事会で決定する形に変更、学部長は学長指名とした。それに伴って教授会の位置づけが一番大きく変わった、と2021年4月から学長に就任した山田 純氏は語る。「これまで最高意思決定機関における特に教学サイドの意思決定には、教授会の意見がかなり重く取り上げられていました。ガバナンス改革後は教授会が学長の諮問に対する意見を述べる場という位置づけに変わり、学長がリーダーシップを発揮しやすい体制が整いました。これによってスピーディーな意思決定が可能になったと思います」ガバナンス改革は学内の足並みを揃える必要があり、そこに苦慮している大学も多いのではないだろうか。芝浦工業大学ではガバナンス改革の移行をスムーズにするため、教授会審議の一部は残し、教員の自治意識を保持しながら徐々に進めたことがガバナンスの移行に大切だったそうだ。また、学長として新しい施策を押し進める際には細やかなステップを踏む。「私も大学が長いので分かりますが、俺は聞いてないよ、という人は必ずいます。そういったことを避けるために、決まっていない段階で、『これを今悩んでいるんだよ、どう思う?』と相談を水面下でたくさん投げかける。そうすると当事者意識を持って考えてくれて、『聞いてない』ということがまず起こりません」芝浦工業大学では法人の理事長から教学側の意思決定については学長に付託する「学長付託型」の関係性が成り立っている。そのうえで学長が学部長を指名し、教学現場で学長を中心とした一枚岩の連携が実現している。さらにその連携を強化するものとして、教学責任者懇話会という会議を月2回設置している。「この懇話会は議事録に残すようなものではなく、そのときに困っていることを話し合い、方向性を見いだすという会です。参加者は学部長、研究担当理事、学事本部長。副学長は時間があるときに参加してもらっています。『こういったことをやりたいと思っていますが、何か問題はありますか』学長 山田 純 氏12事例Case StudiesTheme 01経営戦略の実質化・経営意思決定のスピード化20年前の危機感から生まれたデータドリブン志向芝浦工業大学

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