カレッジマネジメント235号
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データドリブンを支える教育イノベーション推進センター©藤井浩司/TOREALと、案件をトップダウンする前にその方向が間違っていないかどうか、本質の議論をディープに行っています。今キャンパスも2つに分かれているので意思疎通を良くするためにもこういった会の役割は大きいですね」あえて記録に残さない、いってみればアンオフィシャルなコミュニケーションが事前にとられていることで、意思疎通がしっかりできた状態で正式な会議体に案件があがってくる。こういった流れも施策の精度とスピードの向上に関わっているといえる。また、記録に残さない会はさらに上位層でも首脳懇談会という形で行われている。ガバナンス改革以降、このようにコミュニケーションを大切にする意識が醸成され、理事会と学部会の思いを非公式・公式含めて色んな形でぶつけあう機会もあえて設けている。その結果、職員と教員の関係も大きく変わり、職員も専門性とスキルを高め、相互にリスペクトする関係性が生まれているという。データドリブンという点に関して、芝浦工業大学はガバナンス改革以前から取り組み、既に20年かけて整備をしてきた。20年前の芝浦工業大学は外部資金調達に苦心し、学生も集まらないという苦境に立たされていた。生き残り方法を模索するために事務局に大学改革室という対策組織が発足し、このときデータに基づいて数値目標をつくり、教員に納得してもらおうという動きが始まった。まずデータドリブンな立案のために学内のデータを整理して一元化し、必要なデータがいつでも取り出せる体制をととのえ、そこから施策を考え、改革を進めていく手がかりとなった。「今、本学ではエビデンスベースのディスカッション、つまりデータドリブンは日常的に行われています。現在は教育イノベーション推進センターという部署内にIRのセクションがあり、学内のアンケートや分析、理工系の他大学の学生動向の分析などを行い、本学との比較を見ています。IR専門の先生が様々なデータ素材を分析し、毎回の教学系会議で解説するので、トレンドや方向が日常的に見えてくるようになっています」データの整備と、データに基づく施策立案が根付いた環境は、実際に様々な意思決定を可能にした。例えばコロナ感染症で外出が制限された際、アルバイトができなかったり家庭が困窮したときの学費免除やアルバイト相当の生活費援助、オンライン授業の環境整備に一律6万円提供といった施策を早い段階で実施。法人側が前のめりに学生施策に取り組み、データに基づいた素早い意思決定が叶った例だ。また、教学側が女子学生を増やす目標を持ち、それに対して法人側が奨学金を出す、といった協力関係もデータに基づいた議論の中で実現している。エビデンスベースという考え方になじみの深い理系工業大学というアドバンテージはあるかもしれないが、その運用方法はどこの大学でも共通して取り組める内容だ。20年前の危機的状況をデータドリブンとガバナンス改革で乗り越えた芝浦工業大学の手法は見習うべきところがたくさんありそうだ。2030年に向けて乗り越えるべき壁大学経営5つのテーマ(文/木原昌子)2022年豊洲キャンパス本部棟オープンIR部門カリキュラムマネジメント部門データサイエンス部門教学マネジメント推進体制教育イノベーション推進センター(センター長:副学長)全学開講・学科間開講検討部門教職支援室先進教育部門芝浦工業大学理工学共同利用拠点運営委員会外部委員:6名本学教職員委員:センター長以下5名FD・SD推進部門13教学・学修の質保証のPDCAサイクル構築推進全学的な視点や分野・学部等を超えた横断的な視点からのカリキュラムの総合的検討教員:8名 職員:8名教員:5名職員:8名数理・データサイエンス・AI教育の取組の促進教員:8名 職員:6名全学共通科目を見直し学部共同開講、学科間共同開講する科目の検討教員:15名 職員:10名全学的な教職課程のマネジメント(教職課程履修の単位の実質化)DX推進と先進教育の質保証システムの構築教員:6名職員:4名教員: 8名職員:11名FD・SD計画各種研修実施教員:4名職員:4名2022年4月特集01

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