カレッジマネジメント235号
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YaXa大学職員に求められる「ヨコのリーダーシップ」もそも変革のリーダーシップを発揮した経験が乏しいのでやむを得ない面もあります。歴史を振り返っても、中世の大学から今日まで、長らく大学の主役は学生と教員であり、この2つの関係のなかで形成されてきた共同体として発展してきました。そこに法人や事務局という経営体的性格の組織が加わり、これらの実務を職員が担うようになりますが、「決定は教員、事務は職員」という文化が根強く残っています。また、大学によっては、給与水準も高く、職員の側にも、ルーティンワークで安定した収入が得られるなら今のままでもいいと考える人達がいるのも事実です。もちろん、改革の担い手としての意識を持った職員も確実に増えつつあると感じています。彼ら彼女らが存分に力を発揮できる場づくりが、今の大学にとっての大きな課題ということができますね。──大学改革に必要なリーダーシップとは具体的にはどのようなものでしょうか。高橋 そのような改革の担い手になる職員に求められるのが「ヨコのリーダーシップ」です。民間企業は、タテ社会の構造がありますから、トップがこうだと言えば、みんながそれに従う「タテのリーダーシップ」が働きます。しかし、大学はそうはいかない。もともと経営と教学、職員と教員の間に壁があって、お互い不可侵条約の下でそれぞれbcbcgfdefgdeXはタテの構造、Yはヨコの構造を持つ。(中根千枝著『タテ社会の人間関係』)が機能してきた部分もあるし、立場的に教員のほうが運営において影響力が大きいという実態がありましたから。その中で職員が教学の部分も含めて影響するような何らかの改革の施策を打とうとするのであれば、「ヨコのリーダーシップ」が強く求められるのではないでしょうか。部門の壁を乗り越えたり、外部の人と連携したりといった、目標、目的、価値観、色々なものに関して違うシナリオを持って動いている人達を巻き込んでいくタイプのリーダーシップですね。それは今、民間企業でも求められているものですが、大学という組織においては企業以上に必要になると思います。では、どうしたらそのような職員を高橋先生がおっしゃる「ヨコのリーダーシップ」が発揮できるように育成できるかということが、本日のテーマでもあるわけですが、まず申し上げておきたいのは、大学職員は、知的能力という意味でのポテンシャルは決して低くないということです。私が知る限り、国公私立共に、大企業や中堅企業の社員に引けをとらないポテンシャルのある職員がどこの大学でも採用できるようになっていますし、現に入職もしています。もともとの人材リソースに関してこれらの企業と差はないはずなのです。ところが、中途採用に目を向けると、大学が民間企業の人材を採用することはあっても、民間企業が大学で長年働吉武 職員は自分達が改革に能動的に関わらなければいけないんだと頭では理解しています。しかし、体がついていかないというのが現状ではないでしょうか。2030年に向けて乗り越えるべき壁大学経営5つのテーマ図1 タテ社会とヨコ社会15特集01

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