カレッジマネジメント235号
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素養のある人材を発掘し、ミニ変革の機会を提供いた人を採用するケースはあまりありません。つまり、非常に厳しい言い方をすれば、人材育成という面で大学は失敗しているのです。これまでの大学には人を成長させるための学習環境が十分に整っていなかったと考えています。ですから、大学でも、まずはトップが改革の意思を明確にして、改革をどんどんウェルカムにして、素養と意識のある職員が改革を進めていけるように、大きな方向性を示していく。そして、その環境を何年も続けていく必要があります。そうして初めて本当の改革のリーダーが生まれてくるのだと思います。高橋 民間企業でも企画力やリーダーシップが必要だと言われますが、それらは基本的には、企画し、リーダーシップを発揮し、人に影響力を与えて何かを成し遂げなければいけないという状況に追い込まれて、一生懸命それをやるという環境がなければ育ちません。矛盾した言い方ですが、変革の組織カルチャーがないところに変革のリーダーは育たないのです。ルーティンワークだけにずっと携わっている人から経営者は育ちません。吉武 とはいえ、知的能力のポテンシャルはあっても全員がそのように成長できるわけではありません。ヨコのリーダーシップを発揮できるタイプの人材を抜擢して、機会を与え育てていくということが必要ですね。高橋 おっしゃる通りです。「自分に期待されている役割はこの程度」と認識していて、まだそういったリーダーとしての本領が発揮されていない職員達が何パーセントか存在するはずなのです。ポイントは、そういう隠れた素養のある人をうまく見つけて、抜擢し、動機付けし、いくつものミニ変革リーダーシップ経験を積ませて、自分自身を目覚めさせるという取り組みです。例えば、ワーキングマザー経験を通じて周囲を巻き込んでリーダーシップを発揮し、自分のやりたいことを実現する力を身につける人も少なからずおられます。育児と仕事の両立は周囲の助けを借り、人を巻き込まないとできませんからね。さらに、リーダーにとって必要なのは、目線を上げること。そのためにも、発掘した人材に、外に出る機会を作ることが大切でしょう。様々な知的刺激を通じて、変革のリーダーにとって必要な新しい発想が生まれることになるでしょう。吉武 人材を発掘して、小さくてもいいから成功体験を積ませることで磨かれるというのは、まさにその通りだと思います。ただ、大学は人材に成長の機会を与えるということが十分にはできていません。一概には言えませんが「職員は余計なことはするな」という組織文化の中で育ってきた世代と教職協働が重視される環境の中で育ってきた世代の間にパーセプションギャップがあるように感じています。このような状況において、上の世代が下の世代にミニ変革の機会を与えられるかが一つの課題です。高橋 そうなると有望な人材を発掘し、育てるのも難しいですよね。人材の目利きができて、成長の機会を与えられる人間が上にいないと、素養がある人がいても埋もれたままになってしまいますから。「ヨコのリーダーシップ」を発揮するには、もちろん情熱やモチベーションも必要ですが、それだけではなく、自らをメタ認知して自制しつつ客観的に自分や周囲を見つめ、うまく自分の熱意やモチベーションを使い分ける力が求められます。そういった人材は多くはいませんが、小さなことでもいいから経験し訓練して身につけさせるようにすることが重要です。16部門の壁、大学内外の壁を乗り越え、目標や価値観等が異なる人達を巻き込んでいく、強い「ヨコのリーダーシップ」が大学職員に求められる。(高橋)

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