カレッジマネジメント235号
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専門性を強化するには外部からの採用が不可欠高橋 民間企業でも新しいことをやろうと思ったら、それができる人材を外部から中途採用します。大学は、今、まさに新しいミッションを数多く抱えているわけですから、外部からの採用は積極的に行うべきだと思いますね。吉武 それに関しても同感です。大学というのは、大手の早稲田大学でも専任職員は800人程度。私立大学の平均の専任職員は90人程度です。規模の違い等それぞれの大学の特性や課題に応じて人事のあり方を変えていく必要があります。高橋 今大学もまさに新しいことを立ち上げなければいけない状態ですから、外から専門性のある人材を採用しなければ間に合いません。一方、新卒で採用した人材であっても、プロフェッショナルにならなければいけない。ですから、一度外の世界に出して経験を積ませることが必要になるでしょう。吉武 もう一つ、職員の育成ということになると、SDが注外部の目を入れながら、理事会が見ていくことは非常に大事だと思います。──職員力の強化という意味では、人材採用についての課題はありますか。中小規模の大学は、自前で研修もできませんし、ジョブローテーションも難しいでしょう。一方で、先ほど取り上げたように、職員に求められる専門性は高まっていますから、ジョブと、そこで何を期待するかを明確にして、該当する分野に詳しい人材を民間企業、あるいは他大学から採用するというのは合理的な方法です。目されるかもしれませんが、SDを単なる研修のような狭い形で捉えるのは違うと思います。人材育成で本質的に重要なのはOJT。研修はあくまで足りないところを補う役割だと私は考えています。また、研修というと若手中心に行われることが多く、部課長クラスになるとほとんど実施されません。ミドルマネジメントやシニアマネジメントの研修にもっと力を入れる必要があると思っています。それから、研修も含めた人材育成やディベロップメントにおいては、高い専門性が必要なのですが、誰にでもできる業務だと思われている。しかし、専門性がなければ効果的な研修設計はできません。研修を通じて、その人にどんな気づきを起こし、どんな認知の変化を起こそうとし、環境認識と自己認識にどんな刺激を与えて、どんなスキルを身につけたうえで、思考行動特性として定着化させるためにはどうすべきか。その全体プロセスを設計するためには、最先端の専門的知見を勉強していなければできるわけがないのです。人事の仕事に対しては、誤った認識がされていると思います。民間企業では、この分野の専門性の高い人が出てきています。高橋 シニア層に研修が必要だというのはその通りで、民間企業でも問題になっていて、少しずつ変わってきているところだと思います。吉武 大学において、人事という職務の成熟度は低いと思います。人事に科学的な視点や専門的な知見も必要です。人事という専門のセクションを置くことができる大学は多くはないと思いますが、そのスキルや知識を持つ人材を育成することは重要です。人事の専門性をどう強化していくかは、今後の職員力強化に向けて、大きな課題だと言えるでしょう。2030年に向けて乗り越えるべき壁大学経営5つのテーマ(文/伊藤 敬太郎)19特集01新卒で採用した人材においても、プロフェッショナルでなければならない。目線を上げるためにも、大学の外の世界での経験を積むのがよい。(高橋)

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