カレッジマネジメント235号
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デジタルがもたらす教育の多様性とパラダイムシフト稲見 学生が何に価値を感じるか。モノに対する価値観も変化してきました。例えば若い世代は、服を買うならば、物理の服よりもアバターの服にお金をかけたいという人が多くなっていく。リアルとバーチャルという分け方ではなくて、今の若い人にとっては両方ともリアル。その中でデジタルが適しているものと、フィジカルが適してるものをうまく使い分けていこうと考えるようになっているように感じます。中村 メタバース上で生活する人が増えていけば、リアルで何かすること自体が贅沢になると予測する人もいますね。それはあながちSFではなく、現実になっていくことを前提に、教育や社会経済のあり方を考える必要がありますね。稲見 我々にはありふれているものを贅沢に使い、貴重なものを大切に使うという価値観があると、かつて堺屋太一さんが仰っていましたが、SDGsで指摘されているようにフィジカルの世界で使えるリソースは非常に限られていく一方で、リッチな計算機資源とデータ、そして高速なネットワークが世界にあふれています。ディープラーニングを含め、計算パワーを贅沢に使うことがかっこいいと言われる時代なわけです。よって、学生時代に敢えて情報技術を無駄遣いする経験をし、一方でフィジカルのリソースを節約できるようなサービスをメタバースを活用しながら考える。それが未来の社会へのインパクトを生み出すことに繋がると思います。今の学生達が活躍する社会は、メタバースで仕事をすることが当たり前になるかもしれない。未来の学生達に何を教えるかも考え直さなければなりません。例えば、物理世界は物理法則と物質の反応による化学、それらを記述するための数学が基本リテラシーとして必要です。大学の工学部では、1年目で物理実験と化学実験でそれらを体験しながら学びます。それが根本から変わっていくというわけです。──既にiUでは情報技術自体がもう一つの環境であり、実際にそうした世界を作る取り組みをされていますね。スコット・ギャロウェイ氏の著書『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』には、世界の大学の半分は廃校になるだろうと書かれています。日本の人口減少を考えるとそのくらいはいくかもしれない。その頃に残る、あるいは必要とされる学校はどういう姿なのか。今からそれを考えながら実装していかないと間に合わないと思いますね。例えば、今大学で教えていることは、欧米の大手IT企業が本気を出せばすぐにできてしまうことが多くなってきました。また、コンピュータサイエンスは東大で西洋史はハーバード大学、東洋史は北京大学、哲学はオックスフォード大学で学んだという学習履歴のほうが、有名大学の卒業証書より価値を持つようになるだろうし、実際なりつつあります。では、大学は何を提供できるのか、かなり真剣に問われるようになっていくでしょう。学校の壁もオンラインからメタバースで一気に崩れるであろうし、逆に言うとそれを崩していったほうが次の世代の学習環境にとって望ましいとも言えます。そこにドライブをかけるような教育ができたらさらに面白いですね。中村 時間がかかりましたが、漸く日本も全員がパソコンで勉強できるようになってきました。最終的にねじを回したのは我々ではなく、コロナだったとしても、それを後戻りさせてはいけないと考えています。知識を一方的に伝達するだけの教育から、共に学ぶ学習スタイルに変わり、お互いに学びを共有し合うファシリテーションの時代が来たと感じています。稲見 大学は元祖サブスクモデルだったのかもしれませんね。授業料を払えば受け放題だけど、受けても受けなく2030年に向けて乗り越えるべき壁大学経営5つのテーマ25特集01「百聞百見は一験に如かず」という松下 幸之助さんの言葉が教育におけるメタバースの価値(稲見)

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