カレッジマネジメント235号
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学生と社会人が協業するバーチャルな研究所「メタバース・ラボ」リアルでは困難なことをバーチャルで実現地域の人々との協働による地域課題解決型手法を取り入れた「地域課題解決型AI教育プログラム」が、2021年度MDASH Literacyに認定されるとともにMDASH Literacy+にも選定された久留米工業大学。2022年3月には、メタバースを用いてこの教育をさらに発展させた「Society5.0時代に向けた『学科横断・高度専門工学教育プログラム』による地域課題解決型ものづくりDX/AI人材の育成」事業が、「デジタルと専門分野の掛け合わせによる産業DXをけん引する高度専門人材育成事業」に採択された。メタバースの利活用を進める大学はまだわずかであるなか、メタバースにどのような可能性を見ているのか、事業を牽引するAI応用研究所副所長・小田まり子氏と、工学部情報ネットワーク工学科教授・学長補佐の河野 央氏に伺った。同事業は、実世界を模したバーチャルな研究所「メタバース・ラボ」で学生・社会人・教員が交流・協働・課題解決に取り組む環境を作り、DXやAIと専門教育を高度に融合・連携する実践力を身につけた学生を育てて、地域創生中核人材として輩出していくことを目標としている。具体的には、キャンパス内の最新の教育棟である「100号館(テクノみらい館)」を計測してバーチャル空間に再現し、アプリ化して提供。学生を始めとしたユーザーはアバターを使ってメタバース・ラボに入り、授業や実験、PBL、共同研究等に取り組む。また、追加のアバターやアクセサリーを学生が開発し、メタバース内のコンビニで販売できるようにもする。こうした環境を、株式会社ファンタスティックモーション(栃木県宇都宮市)との協業により構築している。メタバース・ラボを作る意義と期待する効果として、河野氏は大きく次の5つを挙げる。❶没入感がもたらす現実とバーチャルの半融合の促進3次元仮想空間は距離感を伴うため、授業に参加している感覚が強化される。また、アバターを用いることでキャンパスに「みんなと居る」という感覚も得られ、オンライン授業で課題とされた疎外感が低減される。❷アバターを介することによる「行動変容」の誘発アバターによって匿名性が強化されることで「質問しづらい」「失敗したらどうしよう」といった感情が低減され、発言や質問の活性化、集中力の変化が期待できる。❸関心・意欲・態度の可視化メタバース・ラボ専用のポイント「KITコイン」を流通させ、学修において高い関心・意欲・態度を示した学生に対して教員がKITコインを配布したり、学生同士が助け合いのお礼に手持ちのKITコインを渡したりといった仕組みを構築。AIを用いてKITコインの推移を追跡することにより、学生の関心・意欲・態度の可視化のみならず、盛り上がっている授業のAI応用研究所副所長工学部情報ネットワーク工学科教授小田まり子 氏学長補佐河野 央 氏28事例Case StudiesTheme 03これからのキャンパス体験─メタバースの可能性メタバースだからこそ可能な実験や学修状況の可視化によりリアルとの相乗的な教育を実現久留米工業大学

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