IT 活用で効率的に人材を採用したいジェネリックスキルを持つ人材も丁寧に見極めたい●既存の学位プログラムの切り売り型 ・MOOC●共通質保証フレーム型 ・MOOC、デジタルバッジ●新規立ち上げ型(成り上がりモデル?) ・MOOC、デジタルバッジ ・大学外の既存の専門資格・認証の枠組みの活用可能●その他般的になる可能性はあるでしょう。いずれにせよ、学びの履歴証明をデジタル化する流れは今後進むと思いますが、現状、日本の大学における学位等のデジタル証明は、確実に遅れています。海外の大学や諸機関から学位や成績の証明書を要求されても、紙ベースの証明書をPDF化して送るような状況です。海外では、EUやASEAN等、特定地域内で学位や単位の通用性をオンライン上で担保する仕組みが構築・運用されています。日本でもこのようなシステムの利用が可能になれば、国境を越えて学修履歴をデジタルで証明できる状況はつくれると思います。また、現状の制度的枠組みでは、日本の大学のクレデンシャルと、「非大学」のクレデンシャルを混在させることができません。しかし、個人が学んで成長したことを証明する個人のための記録なのだから、本来は、国や組織ではなく、個人が所有し管理すべきものなのです。いわゆるWeb3.0の概念ですが、様々な情報や記録データがブロックチェーン技術を用いて個人の「ウォレット」で管理・運用されるようになり、個人の学修履歴や職業履歴も入れられるように進化していくと思います。このような形で証明される学修履歴を、企業等の雇用者や社会が利用・評価するように変わっていくと、極端な話ですが、大学不要論すら出てくるかもしれません。大学側がデザインした学位プログラムという大きな認証の枠組みでの学びに「社会的価値や通用性がない」と判断されれば、当然ながら教育機関としての大学の存在価値自体が問われるわけですよね。一方で、あたかもブロック玩具のように、終わりのない構造体を自ら積み重ねて形作っていけるような学習プラットフォームの活用は進んでいます。少なくとも大学は、積み重特定の知識や技能を習得したことを修了証や「オープンバッジ」と呼ばれる形式によって認証したものを指す。例えば、学士・修士・博士等の一般的な学位課程よりも小規模(マイクロ)に構築された教育プログラムの修了証明として用いられる。MOOC(大規模公開オンライン講座)の修了証を活用したマイクロクレデンシャルも世界的に普及しつつある。ねるクレデンシャルの素となるコンテンツをプラットフォーム上に提供する役割を担えるとは思います。日本においては、採用後に自社内で人材育成をしますが、海外では入社前教育として、学習プラットフォームを通じて必要なことを学んでもらい、そこで一定の学修成果が得られた人を採用するケースもあります。まさに、「売り手」のためのツールですよね。一方で、採用する側としても、1社1社が個別に人材育成に対応すると手間がかかり大変ですが、複数の企業・機関が学習プラットフォームを共通して活用できれば非常に効率的です。── 一方、出口である人材採用において、企業側はどのように捉えているのでしょうか。 松村 そのようなプラットフォームを通じて出されたクレデンシャルは、海外では企業の採用の場面において活用されているのでしょうか。 飯吉 使われていますね。なぜなら、そういったプラットフォームでは、企業側が求める人材像に合わせて、必要とされる技能・知識・経験の有無を、個人が既に取得しているクレデンシャルから判断したり、採用条件を反映させた新たなクレデンシャルを提供したりできるからです。松村 諸外国でオープンバッジ等、デジタルによる学修歴証明が就職や転職で使われているというのは、日本とは大きく違うのだなというのが、お話を伺った実感です。2030年に向けて乗り越えるべき壁大学経営5つのテーマ(出典:飯吉 透氏資料)マイクロクレデンシャルとは図1 マイクロクレデンシャルについてマイクロクレデンシャルの類型31特集01
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