公益の観点からシェアドバリューを整理して異質を巻き込んだ価値創出の基盤を創る有福 東京一極集中という話がありましたが、個人主義が進んだ現在、大都市に行けば行くほどあらゆるものがサービスで解決され、一人でも生きて行けるのではないかという錯覚を起こさせるのかもしれません。そのうえで、あえて共創する価値はどこにあると思われますか。宮田 一人で何でもできるように見えて、そうではないのが現代ですよね。検索ロジックやSNS等、テックジャイアントと呼ばれるプラットフォーマーが提供するツールに依存しながら、そのうえで自分自身の楽しさを享受し、万能感を感じているのがWeb2.0の時代です。今後、そうした中央集権的な管理から脱し、「次世代分散型インターネットの時代」と呼ばれるWeb3.0に移行していく。それは地域の人材が自律分散型でつながって価値を作っていくという流れでもあります。一方、都市化の流れは強い。都市の密が危険視されたコロナ禍であっても、地方創生はなかなか進まなかった。既存の都市化とは異なる新しい未来の形を明確に共有していく必要があります。この時、産業や未来は、トップダウンではなくてボトムアップで創っていくことが必要だと思います。有福 非常に共感します。共創では多様なコミュニティがつながりによって生まれていく。中央集権的なトップダウンでは創れなかった未来を、民主的なボトムアップによって創っていく営みが共創ですよね。宮田 都市は利便性や効率においてはよくできていると思います。しかし、都市は労働職を効率よく供給する仕組みとしての側面が強く、何かとつながっているようでつながっていない場です。一方で地域は、強すぎるしがらみで、未来までがんじがらめに縛られるのが課題でした。都市における産業だけでなく、宮田さんは地域に目を向けられていると思いますが、これからの地域の可能性をどう考えていますか。都市でコミュニティを生むことも大事ですが、効率化のルールに則った都市の在り方をどう捉えるのか。CoIU(仮称)では大阪も東京も一つのローカルであると考え、都市拠宮田 現在インターネットの検索アルゴリズムにおいて、滞在時間を最大化する仕組みが社会を席巻しています。これは他者の異質性に学ぶのではなく、自分の周りを同質のもので埋めようとするもので、これによって生まれているのは分断です。自分にとって心地よい情報に耽溺していき、そうでない価値観に触れる機会がどんどん損なわれていく傾向があります。点も作ろうと計画を進めています。一方、しがらみはあるがつながりは強い地域の見直しも必要です。こうした取り組みでは、大都市ではない「余白地帯」でのチャレンジが必要になります。先日、コピーライターの糸井重里さんとJINSホールディングス代表取締役CEOの田中 仁さんが企画した「マエバシBOOK FES」に行ってきました。前橋は新幹線が通らなかったことで一時衰退していましたが、逆に通らなかったことで画一的な都市像から免れた余白地帯。イベントは「本で元気になろう。」をコンセプトに、家に眠っている本を持ち寄って対話しながら交換し合う、新しい読み手との縁をつなごうとする内容で、会場となった商店街には2日間で約5万人の来場があったそうです。まさにボトムアップのつながりを生む場で、共創の場の価値を再認識しました。──大学が共創する役割や意味はどういうところにあると思われますか。しかしこれからは、企業も従業員の生産性向上に資するウェルビーイング経営や、社会課題であるSDGsを無視しては経営できない。社会を意識した動きは、必然的に多様性を前提にしたモデルになります。ただ、共創の場を創るうえで企業は経済の論理を無視はできない。純粋に社会課題に迫る新たな関係性を構築するには、経済の論理に飲まれない存在が必要で、公益の観点からシェアドバリューを整理して場を創っていくという状況において、アカデミア40中央集権的なトップダウンでは創れなかった未来を民主的なボトムアップによって創っていく営みが共創(有福)
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