50リクルート カレッジマネジメント235 │ Jan. - Mar. 2023近年年内入試が活況となった結果として、学校推薦型選抜や総合型選抜で早期に合格が決まり、「大学入学共通テストまでに受験生が残っていない」という現象が起き始めています。大学入試センター試験から共通テストに改革される際に生じた作問傾向の変化、新課程導入に伴う科目変更もあり、早晩共通テスト離れが起こることを危惧しています。これは、国立大学の一次選抜、私立大学の受験機会拡大、コロナ禍で顕著となったセーフティーネット機能等、共通テストに機能が盛り込まれすぎていることに起因していると思います。特に、昨今年内入試であっても学力担保のため共通テスト受験を課す動きが一定数ありますが、もともと総合型選抜用に設計されているわけではないものを強引に結びつけることで、受験生の負荷が増大していないかが気になります。進路行動早期化のなか、共通テストの存在が進路決定に影を落としかねない。かといって、大学の多くは、年内入試がどの程度の規模で継続的に募集に寄与するのかが見えないなか、総合型選抜用に個別作問する体制は取りづらい。過渡期だと感じます。年内入試の変化で大きいのは、2020年にAO入試が総九州大学大学院 人間環境学研究院 教育社会計画学講座、同大学院 人間環境学府 教育システム専攻、同教育学部 教育学系 教育社会計画コース 教授。独立行政法人 大学入試センター研究開発部 高大接続部門 教授(クロスアポイントメント)。一般社団法人 大学アドミッション専門職協会(JACUAP)理事長。専門は教育社会学、教育計画論。歴史資料に残された各種統計・テストデータの再分析、マクロデータを用いた教育制度分析、テスト及び質問紙の信頼性向上に関する研究を中心に研究を進めている。九州大学/大学入試センター 教授・大学アドミッション専門職協会(JACUAP)理事長 合型選抜へと変化したことでしょう。AOはご存じの通り、「その大学で学びたい」という学生の強い意欲や入学後の目標と大学教育の内容をマッチングすることが本旨です。もっとも、こうした本旨は「学力を重視しない」方針へと徐々に姿を変えました。結果、AO入試が知識・技能評価に必ずしも重きを置いていない故に起こる負の事象が問題視され、一般選抜では獲得できない意欲や個性を持つ人材を選抜する目的のAOにも、学力評価を課し総合型選抜と名称変更するという、2020年の改正につながりました。ここでは参考までに、以前からAOで学力を含む総合評価を行っていた九州大学の事例をご紹介します。九大で「専門性の高いゼネラリスト」育成のために2001~2016年に展開していた21世紀プログラム入試では、2日間に及び基礎学力や意欲・目的意識を含む総合評価を行うAO入試を実施していました(※1)。その理念は共創学部に引き継がれ、現在も進化しています。そこで見られた傾向として、AO入試合格者は、特に研究室所属になる3年次以降にその真価を発揮するケースが多い。具体的には、研究室でのエース級の学生がAO入試経由の入学者ということが多い。学力は高いが意欲が必ずしも高くない人材より、学力は必ずしも高くないが意欲が高い人材のほうが研究向きである、といった例が増えると、学内の評価が変わってくる。一般選抜で入学した学生が学部教育とそこまですり合わないまま大学を「通過」して就職していく一方、総合型で優秀な人材が育成輩出されるという実感値が教員側に視点提供インタビュー/総合型選抜の本質とは何か入試の多様化に伴い役割が変容しつつある大学入学共通テスト学力よりも意欲が大事という実感値が大学の組織文化を変容するSpecial Interview木村拓也 氏社会的評価を得るために非効率への対応が求められる大学入試
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