カレッジマネジメント235号
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目標を持って学んだ生徒がより飛躍できるように総合型選抜と高校の対応各科の生徒の課題研究の成果をもとに、地域の子ども達を対象にしたワークショップも開催。分析、提供を行う。キャリアセンター長の武貞朱美氏は、同組織の設立の経緯をこのように語る。「前任の校長がまさに大学のキャリアセンターをイメージして設立しました。偏差値的な学力で生徒の進路を指導するのではなく、個々の生徒の持つ原石を掘り起こすことから始めよう、と。生徒がどのような体験から何に気づき、どんなことをやりたくなったかを聴き出し、大学側のアドミッションポリシーなど方針も確認し、互いの思いがマッチしていて学びを深められるような進路につなげることを目指しています」また、30~40の主要の大学については、一つの大学につき3名前後の「担当者」を教員間で手分けして割り振っている。そのうえで、2年生の3学期から、担任の教員、キャリアセンターの教員、大学担当者の教員が協力して、それぞれの生徒に対して、進路を見据えた個人面談を行い、志望理由書作成の相談にも乗っていく。受験を終えるまでに、1人の生徒が合計で20回ほど面談をすることもざらだという。武貞氏が実感しているのが、生徒達の伸びしろの大きさだ。商業の学びにはまると、学校の活動を超えて商店街や地域のボランティアに参加したり、外部のビジネスコンテストに挑んだり、簿記や情報処理の資格取得に本気になったりする。内面の成長では、進路を考えるなかで目標が定まると「一気に伸びる」そうだ。こうした生徒達は総合型選抜とも相性が良く、「基礎学力に加えて、人としての成長キャリアセンターによる「キャリアガイドブック」。進路情報を数十ページにまとめて提供。や思いも評価してもらえる入試が広がるのはうれしい」と捉えている。「個人面談を繰り返し、総合型選抜や学校推薦型選抜のために志望理由書を何度も書き直していくと、何をやりたいのか本人のなかで目標が定まってきます。そうなると、私たちが驚くほど、文章も書けるようになるし、プレゼンテーションもできるようになるのです」(武貞氏)だが安穏ともしていられないという。どの高校でも探究活動が始まり、自分の学びを深めた生徒が増えた。その点では競うレベルが高まってきているからだ。「総合型選抜では、学んだことを実社会でどう生かしたいかまで問われることが増えました。1年生の『ビジネス基礎』の授業で生徒が自ら社会課題について調べるなど、社会にも広く目を向けるよう促しています」(武貞氏)進学後の大学のカリキュラムに期待することもある。「総合型選抜で進学した子には、高校時代から目標を持って専門性を磨いた『とんがった人材』が多いかと思います。例えば本校には将来ビジネスの実務に生かそうと、在籍時に日商簿記1級に合格する者もいます。そうした子が、大学進学後にしばらくは初歩的なことしか学べず、モチベーションを下げてしまったことがありました。高校生の時から専門性を深めてきた子が、大学進学後も継続してそのスキルや意欲を伸ばしていける。そうした土壌が今以上にゆたかになっていくとありがたいなと思っています」(武貞氏)課題研究発表。これまでに取り組んできたことを生徒が自信を持ってプレゼンするように。(文/松井大助)59特集02

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