トのなかには、効果があるか分からない広告に、多額の料金を払うのをためらう会社もある。リブセンスは、こうしたユーザーに対して、効果があった分だけ課金(例:求人であれば、リブセンス経由で採用できた分だけ課金)する仕組みとした。既存の求人企業がリブセンスの成功報酬制に同質化すれば、今まで効果があると言って広告の掲載を勧めてきたロジックは破綻するうえ、売り上げも減ってしまう可能性もある。これは、後発者で失うものがないリブセンスだから採れる戦略でもある。大学の例で言えば、グローバル化が叫ばれ、海外留学を義務づけたり、留学生の多い大学も新設されてきた。しかしグローバル化は、大手の大学も比較的同質化しやすい分野であった。例えば早稲田大学国際教養学部(2004年設立)、立教大学異文化コミュニケーション学部(2008年設立)、関西学院大学国際学部(2010年設立)等が次々と誕生し、これらの大学の学部が、偏差値で言うと上位を占め、新設大学の特長が目立たなくなってきた。そうしたなか、立命館アジア太平洋大学(APU)が存在感を維持し続けているのは、立命館という母体のブランドに加えて、その留学生比率の高さにポイントがある。APUの留学生比率は46.0%(2021年11月、大学院含む)であり、かなり高い。この比率を大手の大学が実現することは難しい。仮に上位校が46%留学生を採ると、その大学を希望する多くの日本人が不合格となり、多くの受験生や高校から不満が出る可能性が高い。協調戦略とは、相手企業のバリューチェーンの中に入り込んだり、自社のバリューチェーンの中に他社の事業を組み込むことによって、win-winを実現して生き残りを狙う戦略である。株式会社セブン銀行のATM戦略が典型例である。ATMを自社で持つコスト、それを管理するコストの高さから、撤退したい金融機関は少なくない。しかし撤退すると、顧客へのサービス水準が下がる。そこでセブン銀行のATMに置き換えることによって、コスト削減とサービス水準の維持の両立を目指している。一方セブン銀行は、ATM事業を受託する企業数が増えれば増えるほど、規模の経済性が働き、収益率の向上が見込める。まさにwin-winの関係である。印刷ポータルのラクスル(株)も、自ら印刷機は持たないが、印刷業界に参入し、顧客からの注文を、手余りの印刷会社に発注し、短納期、低コストを実現している。稼働率が平均50%いかない中小の印刷会社にとって、手余りの時期の受注は有難い。また自ら営業担当を持つのは難しいため、ラクスルの営業機能を利用したほうが得である。同じ菓子ばかりでは、ユーザーも飽きてしまう。しかしグリコは全ての菓子を作っているわけではない。そこで他社製の豆菓子や珍味系、そして最近ではアイスクリームも備え、ユーザーが飽きないように毎週入れ替えも進めた。最近では、類似の置き菓子会社も多数参入してきたが、江崎グリコが多メーカーの菓子を揃えていることから、わざわざ他社に置き換える必要もない。ほかに、(株)星野リゾートも、自ら旅館・ホテルを経営するだけでなく、傾きかけた他のリゾート施設の再生事業を受託している。米国ではホテルは所有と運営が分離しているのが一般的であるが、日本では一体のケースが多い。その中で、星野リゾートは運営だけを請け負うプロとして、実績を伸ばしている。従来大学は、全ての資源を自校に備えていないと、そもそも認可されなかった。敷地、校舎、図書、設備のみならず、教員にも厳しい認可規制がかかっていた。しかし世界を見ると、キャンパスを持たない大学も登場している。ハーバード大学に並ぶ人気を集めているミネルバ大学等が、その代表例である。他方日本では、大学の経営上、“持つ”ことの負担が大きくなり、限界に近づいている大学もある。一部には、語学の授業をベルリッツのような専門学校に委託している大学もあ②自社のバリューチェーンの中に他社の事業を組み込む戦略自社のバリューチェーンの中に、他社の事業を組み込むことによって、協調しながら存続をしていくことが可能になる。例えば江崎グリコ(株)のオフィスグリコは、オフィスの中にプラスチックの3段ケースを置き、中に菓子を入れて販売する“置き菓子”サービスである。オフィスグリコが成功した大きな理由として、グリコ以外の会社の菓子も入れたことが挙げられる。③大学における協調戦略①相手企業のバリューチェーンの中に入り込む戦略62(3)協調戦略
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