京都建築大学校 理事長大手ハウスメーカーのディーラーとして住宅建設の仕事に携わっていた私は、建設業界を担う有能な若手を育成しようと、1991年に京都建築大学校(KASD)を開校。「即戦力として社会に通用する人材の育成」を理念に、通常授業とは別に「建築士対策講座」として年間700時間を超える特訓により、在学中に二級および木造建築士資格を取得できるシステムを構築しました。これは大学に比べて柔軟なカリキュラムが組める専門学校ならではの取り組みで、KASD独自のシステムです。1995年には伝統工芸の後継者を育成する京都伝統工芸大学校を、2012年には高度な研究に取り組みながら学士と修士の学位が取れるだけでなく、ダブルスクールシステムによって在学中に二級建築士資格を取得できる京都美術工芸大学を開学(2022年には全国で11番目の建築学部を設置)しました。現在、3校合わせて約3500人が、それぞれ明確な目的意識を持って学んでいます。今回はKASDを中心にお話をしたいと思います。合格者の平均年齢が二級建築士は28歳(令和3年の合格率23.6%)、一級建築士は30歳前後(同9.9%)という数字が物語るように、建築士を目指すには、働きながら資格学校(学費は平均100万円前後)に通うのが一般的で、仕事と勉強の両立には莫大なエネルギーと費用を要します。これに対し、KASDでは開校以来30年で約5000人が在学中に二級建築士資格を取得。さらに大卒待遇での就職を可能にするため、2002年からは文部科学省と総務省が所管する放送大学※1と提携。本校教職員の手厚いサポートにより、2021年度は学士取得希望者333人全員が4年間の履修で学士号を取得しました。こうして多くの学生が、資格と学歴という、かけがえのない一生の財産を手にして社会に巣立っています。建築士資格をはじめ、空間デザインと設計能力を併せ持ち計画段階から竣工までトータルにインテリア空間を実現できる「インテリアプランナー」など、建築業界で役に立つ多彩な資格を持つKASD生は、大手ハウスメーカーや人気企業に多く就職しています。継続的に採用する企業もあり、高い就職実績が意欲ある入学者を増やすという好循環を生んでいます。大卒の初任給は平均で21~22万円ですが、最近ではIT業界などで能力に応じた初任給という例も出てきていると聞きます。KASDの卒業生の多くも、1年目から月収25~26万円以上という好条件で就職しています。建築士資格を取得して卒業するKASD生は、キャリア面でも待遇面でも、入社の時点で既にほかの新入社員を一歩リードしていることになります。資格学校の費用を負担するなどして社員の建築士資格取得を奨励している企業もありますが、それにかかるコストや時間、労力を考えると、有資格者を採用することは企業側にも大きなメリットがあるはずです。2020年の建築士法改正に伴い、建築系の大学や専門学校を卒業すれば、実務経験なしですぐに一級建築士試験が64在学中に二級建築士を取得する独自教育システム法改正で在学中の一級建築士合格が可能に新谷秀一 氏在学中に二級建築士と大卒資格両方を取得し、さらに一級建築士合格を目指す
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