カレッジマネジメント235号
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試行錯誤を可能にする専門部署と専任スタッフの存在配信サービス、スマートフォンのゲームを競合と考えています。つまり、ビジネスパーソンに余暇やお小遣いを使う先として優先してもらえるよう、<ビジネス分野の学び>というコンテンツを作り込んでいるのです。開設以来、企業の人材育成を担当している方と意見交換させていただく機会が数多くありました。人材育成プログラムで足りないことは何か、どういうことを社外、特に大学に求めているのか。デジタル戦略領域、データサイエンス、AI、そして新たな価値の創造の手法…。求められるものは毎年のように入れ替わっていきます。幸いなことに私たちは理工系の総合大学ですから、時代が求めるデジタル領域の学びのノウハウをすでに学内に有していました。そこで、常に最新のものに更新できるような態勢をととのえていったのです」(同カレッジを運営する社会人教育センター・平川保博センター長)。「オープンカレッジでは、講座終了後に受講者アンケートを事務局と講師の先生で共有し、評価された点、課題となった点を振り返って次回へとつなげています。事務局のスタッフも積極的に講座を聴講し、できるだけ多くの受講者の生の声を聞くよう努力しています。講師にお任せにするのではなく、スタッフが自らの実感値を基に主体的にコミットして講座を作り、二人三脚で磨きあげてきたのです」(小原次長)。コロナ禍への対応はむしろ追い風となった。「自分たちもさまざまなオンライン講座を受講してみて、どうすればライブ感が出るかなどと工夫していきました。それがぴたっとはまった」(同)。では、こうした知見はどのように今回のプログラム設計に活かされたのだろうか。「DXを学ぶべき対象として見たとき、学習者が身につけるべきスキルや得るべき知識は、職務によって、あるいはその人の経験や関心によってそれぞれ異なります。そこで前年度の事業では、オープンカレッジで開講されている関連講座から受講生が各自で自由に科目を選コア科目「ビジネスに活かすDX・データサイエンス基礎」2データ3情報技術者育成コースサイエンスコース山口東京理科大学、諏訪東京理科大学によるDX関連講座択するアラカルト制をとりました。100%オンラインとし、受講者が終業後、あるいは出張先からでも参加しやすいよう、時間的な負担を最小化したのです」(同)。一方で課題もあった。どの内容にどのレベルまで取り組むべきなのか、受講者が手探りで取り組む困難さだ。「これまでの取り組みの中で、コアになるべき部分が見えてきていました。そこで、各人が目指している方向性を整え、自由設計できる枠組みの良さを残しながら、選択必修としてパッケージされた20~30時間の学びをコース制で履修する「ハイブリッド」形式としたのです。今回多くの方に応募いただけたのは、この部分のわかりやすさが理由の一つではないかと考えています」(平川センター長)。取材を終えて特筆すべきと感じたのは、社会人を専門とする部署を法人本部に置き、かつ専任スタッフを配した同学の体制だ。それが、企業との意見交換を通じて必要とされた最新のテーマの小規模講座を多彩に展開し、受講者の声をもとにふりかえって改善と更新を重ねていくことを可能にしているのである。個々の社会人が学ぶ意欲の高まり、企業からの後押し、そして「5年で1兆円を投じる」ことが話題となった国の政策。それらに応えることができるか、それぞれの大学が問われている。「これまで大学は社会人の学び先の選択肢としてあがってこなかった。しかし、大学が本気で取り組めば、この状況はどんどん改善されていくと実感している」と小原次長は言う。そして平川センター長は、「理科大は業界を引っ張っていく覚悟はできている」と強く言葉を結んだ。(文/乾 喜一郎 リクルート進学総研主任研究員[社会人領域])プログラム名称実施主体開講形態開講期間時間数DX時代を先導するハイブリッド人材のための“リスキル×アドオン”プログラム東京理科大学オープンカレッジ全講座リアルタイムオンライン形式2022年10月~2023年3月60時間~80時間程度無料(文部科学省令和3年度補正予算事業「DX等成長分野を中心とした就職・転職支援のためのリカレント教育推進事業」採択事業)定員50名受講人数86名(一般公募58名、企業経由28名)プログラム受講を機にDX人材としてのスキルアップを目指す社会人受講料受講人数募集対象プログラムイメージ図67今までのスキル必修講座導入および振り返り講座アドオン選択1新規ビジネス必修講座創造コース選択講座東京理科大学オープンカレッジビジネス講座(デジタル領域)選択講座東京理科大学オープンカレッジビジネス講座(デジタル領域以外)就業支援等

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