カレッジマネジメント235号
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知見の還元による高度化への示唆知見の還元による高度化への示唆将来的な国際競争力の源泉への期待社会のリアリティ重視で学ぶトランスディシプリンな教育タ・デザイン・プログラムがまず設計されました」と七丈教授は話す。全学共通的なこうした動きもありながら、今回の改革は学部・研究科の設置である。共通教育としてレベルアップしていくことも選択肢としては考えられたであろうが、七丈教授は「既存学部の専門性ありきでDSを追加要素として掛け合わせるのではなく、DSとの融合をど真ん中に据えるには、やはりゼロベースの教育躯体を創る必要がありました」と話す。また、新たに構築する学問領域を体系化するために、学士課程と大学院課程を設置することは最初から構想に織り込まれていた。こうした教育体系を創ることで、全学教育改革におけるDSの拠点ができることにもなる。一橋は伝統的に学部間の垣根が低く、他学部乗り入れの履修の自由度が高い。SDSで体系化された教育も、全学共通教育科目を含め他学部に大いに波及することが期待されているという。今回の改革の背景には、一橋の次世代に向けた改革意識がある。「本学の中核は社会科学なので、社会や時代の変化に敏感に教育研究をチューニングするのは文化風土でもあります」と大月理事は述べる。2019年にはこれまで日々社会に蓄積される大量のデータを適切かつ有効に扱うとともに、他の諸科学で得られた知見を活用するの人材育成実績と今後の構想が評価され、社会科学系大学として初となる指定国立大学法人の指定を受けた。指定国立大学法人構想では、「日本の社会科学の改革を牽引する拠点形成-グローバル・ウェルフェアへの貢献を目指して-」というビジョンのもと大学改革を行っていくことが示されている。今回の新増設はその構想に含まれる動きで、2022年度からの第4期中期計画にも明記されている。つまり、国際的に一橋が立てていきたいビジョンを実現するプランニングのひとつが、SDSなのである。新増設の検討が始まったのは2018年頃だったという。そして前述したMDASH認定が2020年。同時並行的に新たな学問としての設計が進んでいったことになる。「既存の延長線上にない未来社会を見据えたとき、ブレイクスルーするための方策が必要です。本学はそれを、理系的アプローチであるDSと社会科学領域を掛け合わせることでひとつ提唱したいのです」(大月理事)。具体的な教育内容を学士課程から見ていこう。学士課程では「SDSのゼネラリスト養成」として、ビジネス領域・社会課題領域・DS領域それぞれの体系的な知識と、それらを融合させてビジネス革新と社会課題解決に対する方策データ分析により得られた知見を現実のビジネス革新・社会課題解決に用いるため、社会科学の知見・理論を活用する図1 SDS概念図69社会科学を高度化する方向性社会科学社会科学とデータサイエンスの融合ソーシャル・データサイエンスビジネスの革新・社会課題の解決現実社会への貢献リクルート カレッジマネジメント235 │ Jan. - Mar. 2023データサイエンスデータサイエンスを高度化する方向性

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