カレッジマネジメント235号
9/83

データドリブン経営にはデータよりも意思決定できる人材を育成する取り組みが必要いるのが海外の企業。そこに日本企業との差を感じることがあります。――データを必要なときにすぐに入手できる環境とはどのようなものですか。日本では「このデータが必要です」となったときに、「あの人が持っているデータがたぶん最新です」「いやあっちのエクセルにしたものが最新です」、あるいは「〇〇部署の◎◎さんのPCの中じゃない?」ということが起きがちです。必要なデータになかなか到達できないし、到達するために1カ月も2カ月もかかってしまうことが現実問題として多々あるわけです。海外のデータガバナンスはこういったことが起こらないためのデータの整備・統制に加え、どのように利活用していくかというところまで含めて全体をコントロールし、安全でより効果的にデータを提供するためにはどうしたらいいかということをきっちりとマネジメントするという考え方です。安井 海外企業にはデータガバナンスという考え方があり、チーフ・データ・オフィサーと呼ばれるデータ管理専門の責任者を置き、社内のデータがどこにどのような状態で置かれているか、誰にどういった権限を持ってデータが提供されているかということをコントロールしています。ひとつの場所に全てのデータが集まっていて、そこさえ見ればどんなデータでも揃いますよ、公開しておくので活用してくださいね、という状態を作っているわけです。両角 大学のIRの担当者が最初に何をするかというと、データが学内のどこにあるのか、誰がどんなデータを持っているのか、どのシステムに何が入っているのかということを各部局に交渉して調べます。それからデータを整理したり、各部局のシステムをつなげられる可能性を探ります。一番問題となるのが、システムです。入試、教務等それぞれにローカライズされたものが多く、中に入っているデータを統合するのが難しいのが現状です。以前から指摘されていますが、大きく変わりません。――データと向き合うには目的を持ってデータを取りに行き、データから意思決定を導き出す力が大切だということが見えてきました。これまではデータサイエンティストやIRerをどう育てるかということばかりが注目されてきましたが、判断や意思決定ができる人をどうやって育てていくか、という課題もでてきますね。――両角先生は学長になるための教育システムに取り組まれていますが、こうした意思決定をどうしていくのかということも学べるしくみがあるのでしょうか。安井 2000年ごろの日本企業に似ていますね。ここはITの力で解決したいところですね。両角 結局データであっても定性的なことであっても、そこで一定の価値判断と信念で決めていかなければならない。それができるかどうかの問題は大きいですね。IRerというよりも意思決定をする人達のマインドの教育の方が大事だと思います。実際にデータドリブン経営が回っている大学でもIRのスタッフがすごく充実しているというわけではありません。成功のカギは、トップである学長の方針や、大学として何が必要でそれをどう活用したいと思っているのかや考え方がはっきりしているということです。安井 企業経営でも同じですね。「何かをするためにデータを使う」のであって、「データを使えば何かができるという前提のもと、人を雇う」ということではないわけです。経営の意思があり、データドリブン経営が必要であれば取り入れる。2030年に向けて乗り越えるべき壁大学経営5つのテーマ9特集01意思決定のスピードよりも、データも交えて意思決定し、マネジメントできる人をどう育てていくのかが大学の課題(両角)

元のページ  ../index.html#9

このブックを見る