Interview必要なのは「アウトサイド・イン」による大変革インタビュー10東京大学法学部卒業、安田火災海上保険(現 損害保険ジャパン株式会社)入社。2001年以来、社内でサステナビリティ推進に関わる。理事・CSR 統括部長を経て、現在同社経営企画部のシニア・アドバイザー。その間、ISO26000 日本産業界代表エキスパートとして、社会的責任の国際規範づくりに関わり、WBCSD等グローバルな産業界のイニシアチブにも参画。国内でも、SDGsを組み込んだ経団連企業行動憲章改定に関わるなど、産業界へのSDGs浸透に尽力。経団連企業行動憲章タスクフォース座長、SDGsステークホルダーミーティング構成員(環境省)ほか、産業界・各省庁の委員等を歴任。2022年3月まで明治大学経営学部特任教授、2022年4月より社会構想大学院大学 客員教授、放送大学客員教授を務める。専門分野は、企業の社会的責任、マルチステークホルダー・ガバナンス等。著書に『SDGs経営の時代に求められるCSRとは何か』(第一法規)、『持続可能な社会と生活』(放送大学教育振興会)等学校法人先端教育機構 社会構想大学院大学 コミュニケーションデザイン研究科―企業の経営にとって、SDGsの取り組みはどのような意味を持っているのでしょうか?WBCSD (持続可能な発展のための世界経済人会議)は、2021年に産業界の主張を凝縮する形で「Vision2050」という提言書を発表しました(図2)。2050年までに90億以上の人が地球の許容量の範囲内で真に豊かな暮らしをできるようにしなければならず、これに対して、切実な問題である「Climate(気候変動)」「Nature(生物多様性)」「People(格差・人権)」の3つの要素に関して、ビジネスとして何をすべきかを提言しているものです。この「Vision2050」においては、変革の道筋として9つの分野が示されています。例えばこの中の「食料」について言えば、生産者から輸送され、加工されて、消費者に渡り、最終的に廃棄されるまでのバリューチェーンがありますが、その全体を通じて、Climate・Nature・Peopleの3つの要素の大変革を盛り込もうというもので、そこに企業が深く関わるべきとしています。―例えば、具体的な企業の取り組みとしてはどういったものがありますか。SDGsに戦略的に取り組んだことによって企業価値も向上した企業の例を挙げるならば、ユニリーバでしょう。SDGsの本質がどこにあるのか。企業においてはどのようにSDGsへの取り組みが進んでいるのか。大学経営が重視すべき考え方とは何か。サステナビリティ経営に関する有識者に尋ねた。―そもそもSDGsの本質的な理念や考え方について、改めてご説明いただけますでしょうか。SDGsは、一般的には高邁な理想のように思われています。しかし実際には、非常に切実な問題を解決するための具体的な実践の目標です。この図(図1)は、我々が置かれている危機的状況をドーナツの円に見立てたものです。外側の輪が「プラネタリー・バウンダリー」といって、気候変動等、9つの要素において地球の許容限界を超えてはいけないということを示しています。内側は「ソーシャル・バウンダリー」、つまり貧困や医療、教育等、超えなければいけない最低ラインです。しかしプラネタリー・バウンダリーは、既に5つぐらいの要素において超えつつあるという状況。一方のソーシャル・バウンダリーに関しても、途上国は貧困や格差、あるいは紛争の脅威に晒されている人が増えています。我々は、こういった非常に切実な状況にあって、図のドーナツ本体部分に収まるような限界内での成長をなんとか成し遂げなければなりません。そのためにはあるべき姿を起点とした社会・経済システムの大変革(トランスフォーメーション)が必要なのです。関 正雄 氏大学のあらゆる意思決定基準にSDGsを取り込むことが重要
元のページ ../index.html#10