カレッジマネジメント236号
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▶ Nature 生物多様性1 システム思考コンピテンシー2 予測的コンピテンシー3 規範的コンピテンシー4 戦略的コンピテンシー5 協働コンピテンシー6 批判的思考コンピテンシー7 自己認識コンピテンシー8 統合的課題解決コンピテンシー- Climate Emergency ▶ Climate 気候変動- Nature in Crisis - Mounting Inequality ▶ People 格差・人権複雑に絡み合うSDGsの課題解決にはトランスディシプリナリーが不可欠*WBCSD (World Business Council for Sustainable Development) 持続可能な発展のための世界経済人会議出典 : WBCSD(2021)“Vision 2050” をもとに関が作成章タスクフォースでは「企業行動憲章実行の手引き」を策定しています。その憲章の序文には、“サステイナブルな資本主義の確立を目指して”という副題を付けており、特にDXを一つのツールとして、社会的課題の解決を目指し、社会や個人のウェルビーイングの向上に貢献しようというSociety5.0 for SDGsの戦略を明確にしています。―また、ESG投資という形で、環境・社会・ガバナンスの観点が企業経営における投資判断に大きく影響していると思います。はい、ESG投資は、投資活動のメインストリームとなってきています。かつてはサステナビリティに関する情報は非財務情報でしたが、今はサステナビリティに取り組むことはビジネス機会に繋がるものであり、逆に放置しておくことはリスクになると考えられています。Climate・Nature・Peopleの全てに関する戦略と実績が財務情報化しつつあり、投資家も財務情報として開示を求めるようになっています。―ここからは、主に大学の取り組みについて伺いたいと思います。大学におけるSDGs教育の位置づけについてはどのように捉えていらっしゃいますか。【切迫した3つの課題とは?】 出典:Marco Rieckmann (2018) “Learning to transform the world: Key competencies in Education for Sustainable Development” UNESCO Pressをもとに関が作成サステナビリティに関わる人材として、トランスフォーメーションができる人材の育成が求められていると思います。そこに必要なのは8つのキー・コンピテンシーだといわれています(図3)。私がこの中でも特に重要だと考えているのが、「システム思考コンピテンシー」「予測的コンピテンシー」「協働コンピテンシー」「批判的思考コンピテンシー」です。物事のシステム全体を捉える力、アウトサイド・インで課題解決を考えられる力、課題解決に関わるマルチステイクホルダーとのパートナーシップ関係を築いていける協働力、そして規定路線に甘んじることなく問題解決の案を打ち出せる力です。SDGsに関する科目をいくつか設けるといった単発の取り組みではなく、カリキュラム全体において、そういった人材育成の考え方を反映させることが必要だと思います。もう一つ大事なのは、主権者教育だと思います。大変革を起こすためには、社会の問題を自分の問題として捉え意思表明をすることで、政策決定に権限を持っている人や周囲の人々を動かす力を持たなければいけませんが、日本人には圧倒的にその力が足りていないと感じます。―大学の「研究」の側面に関してはいかがでしょうか。様々な学問分野の人やマルチステイクホルダー間の壁を超えるトランスディシプリナリーな研究が不可欠です。Climate・Nature・Peopleの課題は、言うまでもなく複雑に図2 WBCSDのVision 2050図3 サステナビリティのためのキー・コンピテンシー“2050年までに、90億人以上の人々が、地球の許容量の範囲内で、真に豊かな暮らしをできるようにする。”12

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