カレッジマネジメント236号
13/91

特集0113SDGsの達成絡み合って相互依存しているものであり、それぞれ単独で考えていては解決できないものだからです。私がプログラム統括を務めているRISTEX(社会技術研究開発センター)では、「SDGsの達成に向けた共創的研究開発プログラム」(図4)を実施しています。これは、研究者と社会課題に取り組む当事者とがペアとなってプログラムに応募し、シーズとなる技術を生かしながらシナリオを作る段階から社会実装まで一緒に考え解決していくという取り組みです。こういった共創的な研究開発を、大学にも実施してほしいと思います。―教育においても研究においても、大学のパーパスに取り込む必要があるということですね。そうです。そしてパーパスとして掲げるだけではなく、「At all levels at all settings」、つまりあらゆる意思決定の中にSDGsを組み込むことが大事だと思います。大学の場合、例えば、理事会での決議から学生一人ひとりの活動まで、あるいは物品購入の調達基準や、資産運用の基準等、多様な場面があるでしょう。さらには、大学がどのようにSDGsに取り組んでいるかを透明性高く情報開示していかなければなりません。この点では企業の情報開示が進んでおり、参考にするとよいと思います。また、「At all levels at all settings」ということで言えば、大学は18歳からの若者だけでなく、地域や行政関係の人等・ 研究開発期間 原則2年・ 研究開発費(直接経費) 400〜600万円程度/年・ 研究開発期間 原則3年・ 研究開発費(直接経費) 1,900万円程度/年·技術シーズ·SDGs達成のアイデアSDGs達成の“構想” (シナリオ)を創出・対話・協働・社会課題を分析、ボトルネックを明確化・地域での可能性試験SDGs達成の“解決策及び事業計画” (ソリューション)を創出・地域での実証試験による解決策の有効性確認・事業計画の策定・他地域展開の準備(適用可能条件、 環境設定の提示など)事業計画の実行及び他地域への展開·技術シーズ·SDGs達成の構想(シナリオ)出典:JST RISTEX SOLVE for SDGs 令和4年度公募要領よりに教育する役割もあるでしょう。世の中の意思決定に関わる人がコンピテンシーやリテラシーを培うための場づくりは、大学のミッションではないかと思います。―先ほども、「壁を乗り超える」ことの重要性についてお話しいただきましたが、大学がセクターの壁を乗り越えるための良い方策はありますか。ステイクホルダーとの対話だと思います。多様なステイクホルダーと対話をすることによって、自分達が持っていない視点を獲得することができますし、同時に相手に気づきを与える機会にもなり得ます。そういった場を頻繁に作っていくべきではないでしょうか。さらに大事なのは、グローバルな視点を持つこと。日本には日本の立場や良さがあり、そこに回帰する姿勢も時には大切ですが、世界のステイクホルダーの考え方や行動をアンテナ高く見ていくこと、そしてグローバルな議論の輪に入っていくべきだと思います。いずれにせよ、大学組織には多様な人がいて意思決定も複雑であるからこそ、経営トップの考え方は非常に重要です。トップが本気にならなければ組織は動かないということは改めて強調しておきたいと思います。SDGsとは何か。突き詰めて考えると、世の中の全ての「人間の尊厳」を守ることが究極の目的です。人間を中心にして課題解決を組み立てるという問題意識を全ての関係者に持っていただきたいと思います。 (文/金剛寺 千鶴子)他公募ビジネス・事業化等SDGs達成への貢献・研究継続・ステークホルダー共創・広域ネットワーク構築図4 SDGsの達成に向けた共創的研究開発プログラム大学にとってのSDGs研究者と社会課題に取り組む当事者による研究開発実施体制シナリオ創出フェーズ ソリューション創出フェーズ

元のページ  ../index.html#13

このブックを見る