カレッジマネジメント236号
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Report渋谷教育学園渋谷中学高等学校は、国際人の育成を掲げている中高一貫校だ。そのなかで「SDGs達成を担う次世代地球市民の育成」という方針も打ち出している。元をたどれば、その構想は、学園長である田村哲夫氏がかつて校長だった2000年代に、ESD(持続可能な開発のための教育)の推進を生徒と教職員に呼びかけたことから始まるという。2002年の国連総会で採択された「ESDの10年」の方向性を目指そう、と。だが、当初は教員の反応はやや鈍かった。のちにESDを推し進める北原隆志氏は、こう振り返る。「その頃の私が英語教員として目指していたのは、欧米に負けない発信力や論理性をもった人間を育てることでした。海外の名門大学への合格者も増え、『もう十分に国際人が育っている』と思っていたのです」考えを改めるきっかけをくれたのは、生徒達だ。ESDの一環で若者の国際会議に参加した生徒達が、以降も自発的にエネルギー問題の対話の場を設けたり、アフリカのHIV撲滅の資金集めをしたりと、勝ち負けを競うのとは違うことに邁進した。その姿が印象に残るなかで、2010年に日米教員が集うESD会議に参加すると、イェール大学が小中高や企業と組み、豊かな自然を取り戻すことに挑んでいることを知った。しかもその課題解決に向け、子ども達が教科横断的に学んでいた。北原氏は日本の教育との落差に愕然とし、教員よ自分で調べ、考え、行動して発信する14リクルート カレッジマネジメント236 │Apr. - Jun. 2023Report高校事例報告生徒に引っ張られるようにSDGsに向かうり先に同じ方向に走り出していた生徒達のことを思った。「帰ってすぐに教員にプレゼンしました。学校の中で個別に教科を学ぶだけでは、社会課題は解決できない。多様なパートナーとの連携や、クロスエデュケーションが必要だ。ESDに向かう改革を本気で始めようと」それ以降、同校では外部連携や教科連携が進んでいった。前提に置いたのは「持続可能な開発のためには、環境だけでなく平和や貧困など様々な課題と向き合う必要がある」ということだ。2015年、国連サミットでSDGsが採択され、持続可能な開発に向けた17の目標が示された。「自分達が行ってきた教育と、国際社会で目指すゴールが重なった」と感じた。そのSDGs達成に向かう学びをさらに追求した。現在、同校のSDGsの教育は3つの柱からなる。1つ目は、教科横断型のSDGs授業と研修旅行だ。「平和な社会のあり方」をヒロシマの国内外の捉え方から考えたり(図1参照)、「SDGsのゴールとそのための連携」を、貧困やジェンダー、水問題、気候変動などを各教科で学びながら考えたりする。知識を学ぶだけでなく、自分で調べ、解決策を考え、その考えの下に行動し、発信までするのが基本。研学校DATA■生徒数1235名(男子585名、女子650名)■進路状況(2021年度)大学166名、就職1名、 進学準備等35名WWL・UNESCO委員会委員長北原隆志 氏渋谷教育学園渋谷中学高等学校生徒が自分で調べ、考え、行動し、頼れるパートナーも見いだし、持続可能な開発へ産官学で「スマートシティ」を共創1外とつながり、共に進める高校のSDGs

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