カレッジマネジメント236号
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特集0115SDGs達成のためのリベラルアーツを修旅行では調べたいテーマに沿って現地でインタビューも行うが、そのためのアポイントメントも生徒自身で取る。2つ目は、自調自考論文だ。高校1年生から3年生にかけて自分の研究課題に取り組み、論文にまとめる。テーマは何でもいいし、「誰に頼るか」も自由だ。「生徒は研修旅行で外部とアポイントメントを取ってきた経験があるので、大学の先生にも自分で連絡します。大学の先生方には本当にお世話になっています」(北原氏)3つ目は、サービスラーニングだ。高校2年生のときに社会貢献活動に挑む。いつどこで誰と何をどのようにやるかは、全部生徒に委ねられる。個人で動く生徒もいれば、友人や家族と組む生徒、他校や企業を巻き込む生徒もいる。唯一の決まりは「行動して発信までする」ことだが、発信方法は自由で、学校での発表でも、Web発信でも、外部の大会でのプレゼンでもいい。生徒達主導で、SDGsをテーマに国内外の中高生が学び合うイベントも誕生した(19ページ参照)。こうした学習環境を整えていくと、「生徒達の進路への思いがよりクリアになった」という。図1 ヒロシマから戦争を考える教科横断型授業やサービスラーニングでは、学校の教室で、または校外やオンラインで、多様な人と関わって意見を交わし、力を合わせていく。「進学後や就職後に『そこで何をしたいか』まで語ってくれるのです。『高校生の自分では知識や信用が足りず、ここまでしかできなかった。だからこれを学んでこんな立場になってこうしたい』と。ハーバード大学にも合格する力がある生徒が、自分の進路を見据えて国内の大学を選んだこともあります。逆に『医師になって途上国の医療環境も良くしたいけど、医学と途上国支援の両方を学べるところが国内にない』という理由から、海外に出た生徒もいます」その点では、海外に進学した生徒からは「日本の大学は、海外と比べると専門の一分野しか学べないことが多く、リベラルアーツ(いわば課題解決に向けた多面的な教養)を学びにくい」という声が出るという。「ある生徒は、ビジネスを通して地球環境を良くしたいと考え、経済と環境の両方を学べる海外の大学に進みました。日本では経済なら経済と、専門に学べる領域が限定されがちです。多面的な知を掛け合わせて壁を越えるような、リベラルアーツの学びが今後一層充実していくことを私も期待しています」(北原氏)リクルート カレッジマネジメント236 │Apr. - Jun. 2023(文/松井大助)大学にとってのSDGs1992年、地球サミットで、環境問題に皆で取り組む行動計画アジェンダ21が採択された。国際競争下での協調だった。2002年には国連総会で、今後10年を「ESD(持続可能な開発のための教育)の10年」とする決議案が採択される。そして2015年、国連サミットでSDGs(持続可能な開発目標)が採択された。ESDも引き続き世界に広がり続けている。SDGsは、いうなれば社会の持続への懸念が強まるなかで、世界全体で取り組むことを切望されるようになった目標だ。そうした時代に求められる教育とはどういうものか。SDGsの取り組みを推進する高校の先生にお話を伺った。教科・活動取り組み内容情報広島のことを生徒が自ら選んだテーマに沿って調べ、ホームページを作成研修旅行生徒が各自の選んだテーマごとにチームを組み、広島で現地取材をする安全保障や核兵器禁止条約について学び、原爆投下の証言・記録映像も視聴したうえで、生徒が核廃絶・核使用・核抑止の立場に分かれて発表・議論井伏鱒二の『黒い雨』と、核兵器使用の描写のあるアメリカ映画をいくつか鑑賞し、核兵器の捉え方の差異を考察するアメリカのパートナー校向けに歴史教材を生徒が作成、授業で使ってもらって評価を受ける。真珠湾攻撃や原爆投下をどう学んできたかも互いにシェアする公民国語英語

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